怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

春の東京2

朝は昨夜買っておいたおにぎり弁当っぽいやつで済ませる。昨日散財してしまったので、こういうメリハリも必要。今回から心苦しくも食事代を家計で出してもらうので、楽しむだけでなくところどころは倹約も心がけたい。
練馬区立美術館へ。何度も行っている美術館だが、朝一番は初めてかもしれない。中村橋の駅前は特に面白いこともないけど、さわやかな朝だ。
練馬区独立70周年記念展 サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」。レイモン・サヴィニャックのポスターがいかにもパリっ子らしい粋な作品が並んでおり、現代アート中心の僕には一服の清涼剤。こういう朝にはちょうどいいかも。相変わらずキャプションが丁寧で、ここの学芸員がかなり熱心で質が高いことがわかる。キャプションの細かさを求めるタイプではないのだが、区立なのにこのレベルとなれば舌を巻く。この学芸員レベルだからいい企画も多くなり、何度も足を運んでしまうのだろう。
池袋から六本木へ。今までにない移動経路なのでかなりまごつく。
六本木一丁目駅からタカイシイフィルムへ向かったのだが、この六本木一丁目あたりに偏奇館があったようだ。そうかこの辺か。そのころの六本木がどんなものであったか、けして賑やかな街中ではなかったろう。現地を知ると、永井荷風がどんな暮らしをしていたのか、急にリアリティを持ち始めた。
さてタカイシイの吉野英理香「MARBLE」を見て、そろそろお昼なので六本木のゴーゴーカレー。お昼どきなのに店員さんは一人、しかし客も少ないので問題はなさそう。そんなに辺鄙でもないのにどうして流行ってないんだろう。暗くて小汚いゴーゴーカレーは六本木の客層と合わないのかもしれない。
21_21DESIGN SIGHTで「写真都市展 −ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち−」展。こんなところがあるとは初めて知った。初めてなので広さも雰囲気も全く知らなかった。今後来ることがあるんだろうか。展示は、クラインの作品がいくつかとアジアの現代写真家の作品。どちらかといえば現代作家の作品が中心で、それはそれでいい。沈昭良「STAGE」はエネルギッシュな台湾の街頭をスパっと切り取った作品で、熱気のあとの気だるさも描写できているのがいい。勝又公仁彦も、都市の動的な姿を表していて、これもよかった。須藤絢乃さんは「幻影 Gespenster」のころから追っているのに、「面影 Autoscopy」はまとまって見るのはこれが初見となる。うれしい機会。タイトルの大仰さに騙されがちだが、普通にアジアの新進・中堅作家の作品展として楽しく鑑賞できた。
RAT HOLE GALLERYのあとは転居と解体が進む都営青山北町アパートを名残惜しく通り抜ける。そりゃあ絶好の再開発用地かもしれない。わかる。でも、東京の真ん中にこういう住宅があって人が暮らしてるのを見るのは、僕は好きだった。つまらないビルだのマンションだのなんか、誰が見たがるんだ。
ワタリウムで「理由なき反抗」展。B1でやっていた中原昌也の近作のほうが面白かったかもしれない。ここは借りてきた作品が多いとか作家を呼んで新作をとかはそこそこ面白いんだけど、手持ちの作品で企画をひねり出したような展覧会も多い。今後は精査していくべきかもしれない。
向かいのEUKARYOTEでYOUNG ARTIST EXHIBITION 2018。ほんのわずかな期間で消えてしまったセゾンアートギャラリーの流れを汲んでいるようで、そこで見た作家もあった。
今日の夕方には小岩に向かうのだが、まだ少し時間があるので神楽坂方面へ。東京メトロの24時間チケットは3分ほど過ぎていたのだが、試してみたら通れた。数分の余裕は見てるだろうと思ってたが図星のようだ。その豆知識が役に立つことはあまりないだろうが、ひとつ経験値が上がった。
江戸川橋駅からwaitingroomへ。平子雄一の作品は初めて見るかと思うが、ドロドロした野生の感覚は僕の好きな性質を持っており、今後もフォローしていきたい作家。ギャラリーmomoと同じく、ここも若手の発掘がうまいと思っているギャラリーなので、要注目だと思う。続いてSprout Curationにも。服部憲明はSproutの初個展から見ているけれども、画風の変遷がすごい。その理由を作家さんが語っていたのだが、まああんまり聞きたくはなかったなあ。やはり情熱のゆえの変遷という夢はもておきたいので。そういう事情は分かるというか当たり前のことと思うけど。作品はなかなか興味深くて、当初興味を持ったころの面影はないけど、でもいい作家だと思う。
少し遠回りかもしれないが早稲田通りをだらだら歩き、飯田橋から両国へ。ギャラリーmomo両国で大坂秩加「ささやかな今日のおわり」。壁を真っ赤にしスナック風のカウンターやソファまでしつらえたギャラリーに新作の油彩等。ここでも六本木と同様に、大坂さんのテキストによるイメージ作りが力を持っている。明日の営業にむけて日めくりカレンダーをちぎり、そこに書かれる今日の情景。こういうインスタレーションに力を注いでいるところに大坂さんの真骨頂があるのだと思う。そういうことを本人にきちんと伝えられなかったのは残念。
小岩のブッシュバッシュへ。小岩にはまた行きたいとずっと思っていたのでやっと行くことができてうれしい。今日はあちこちでいいイベントをやっており、決めるのが本当に大変だったけど、決め手になったのはインキャパシタンツのライブがしばらくないということと、会場がこの小岩だということだろうか。
そういうわけなので、少し時間を取って小岩の町をぶらつく。古本屋もあるし味噌屋もあるし立ち飲み屋もある。以前は古くからの店がもう少しあったような記憶があるが、ここもチェーン店化が進んでいるのだろうか。寂しくはあるが、町の時計屋さんのウィンドウを眺めたり衣料品店のぶら下がりを見たりと飽きない街には変わりない。
ライブ前に美川さんからカセットテープを2本購入。INCAPACITANTS「We Shall Return」、Fumio Kosakai/Torturing Nurse「split」次のライブはおそらく来年4月ごろとのこと。もちろん東京だろう。大阪に来るのはもともとレアだし、東京だって僕とタイミングが合うのはレア。今日来てよかった。もしかしたらこれが僕にとってINCAPACITANTS最後のライブになっても不思議はない。
Painjerkもライブの多くない人だと思う。僕は初めて。
次がINCAPACITANTS。構成はだいたい安心感のあるもので、ただ耳をいたわって耳栓を持参したのがどうだったか。傷める覚悟でライブを見たほうが鮮烈なのは間違いないので、今日はそのほうがよかったのかなあ。ライブはいいけれども、どうも印象が薄くなってしまう。
最後がMoE(from Oslo)。
名残惜しくBUSHBASHを後にし、小岩の町をもう一回りして駅北のイトーヨーカドーで弁当を2つ買いホテルへ。寒い。