怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

春の東京4

朝は昨日買っておいた弁当で済ます。倹約である。贅沢は敵である。
荷づくりは多少手こずる。そもそも今回は荷物が多すぎる。しかも重い。コインロッカーに放り込むまでの辛抱だが、こんな有様では夜行バス乗車への準備がおろそかになってそう。
ホテルを発ち、東京駅のコインロッカーへ。定番の場所がいっぱいで、仕方なく別のところを探す。見つからなかったら大変なことになるが、幸いなんとかなる。
そのコインロッカー、構内ではいつも空いてそうな穴場で、あとはきれいなトイレが近くにあれば悪くない。ただ穴場だけに場所がわかりづらいので、夜行バス前の限られた時間にスムースに動けるのかが不安。
埼玉県立近代美術館へ。この遠方の美術館にまさかまた行くことがあるとは思わなかった。天気がいいし、開館前のわずかな時間は公園の噴水を眺める。いい時間だ。4月はいい季節だ。
開館時間になり「モダンアート再訪」展。福岡市美術館が休館中にコレクションが巡回するようだ。福岡市美術館の近くに住んでたころはたぶん1回しか行ったことがなくて、今はコレクションを見にわざわざ足を運ぶ。そんなもんだろうが、若い時期を無駄にしたのだなという思いがまた募る。悔いが残ってこそ人生、というのが当時の口癖で、実際そうだと今も思ってるけど、ああすりゃよかったということはやはりたくさんある。
コレクションは具体や九州派、現代美術などで、ほとんど1作家に1作品なのでどうしても総花的にはなるのだが、さすがに質は高いし見たことのない作品がほとんどなのでなかなか満足度が高い。特に九州派なんて初めて見た。日曜だというのにお客さんもまばらで快適だし、いい時間だった。常設は初めてだったがざっと鑑賞。コインロッカーに荷物を入れるときには気づかなかったが、うち一つに宮島達男のガジェットが入っていた。得した気分。
お昼ご飯といきたいが、あまり時間もないのでおにぎりを買って駅でもぐもぐ食べる。
原宿のギャラリーAMで荒木経惟天獄へのパスポート」。騒がしい世評と呼応したわけではないだろうに、荒木の世界を閉じようとする静けさがある。大量のポラロイド、どれがいいとか悪いとかは決められない。大量に貼られてこその作品だろう。
新宿でもう一度世界堂を見て、新宿眼科画廊の神田旭莉「You dominated you」を見て吉祥寺へ。HMV吉祥寺なるものがいつのまにか出来たようで、しかも僕の記憶にあるHMVではなく中古レコードが整然と並ぶ大型のレコード店だった。時代に合わせて、ということなんだろう。行くたびに人影がまばらになってゆくタワーレコードを見ると、そういう方向で生き残ろうとするのが正しいんだろう。僕はHMVにはあまり行かなかったけど、ちょっと寂しい気もちになるし、こういうファッションビルでファッション的にレコードが扱われるのも居心地が悪い。でもこれも時代ってやつだ。かつてレコードが投げ売りされていた時代にもっと買いこんでおけばよかったかな。そんな金はないし、CDのほうが手軽だ。
そのHMVでけものインストアライブ。ライブの多くない、まして大阪でのライブはまずないけもののライブを見れるなら、通常美術館にいるこの時間帯をライブに充てるのは望むところ。ほんとうにラッキーだった。30分余りのライブだったが、青羊さんののびやかなボーカルがトオイダイスケのキーボードと織原良次のベースに乗って日曜の午後にふさわしい。音響も不満なしだし、ありがたさしかない。本来ならサイン会だレコード掘りだとなるところだが、時間も限られているし持ち運びのことを考えるとレコードを買うのは厳しい。ということで割愛して同じビルの武蔵野市立吉祥寺美術館へ。福田利之展がちょっと気になったのだが、実際に見てみると僕の好みでは全然ない。あくまでも好みの話で、お客さんはたくさん来ているので僕が場違いなだけ。そうかあ。僕はむしろ常設の浜口陽三と萩原英雄を眺めて満足。企画展分の200円がもったいないという以上に時間がもったいなかった。でもこれは僕のせい。仕方ない。
空腹も限界に達し、久しぶりに行きたかったグランキオスクへ。もともとはコーヒーだけ飲んで休憩のつもりだったけど、遅いランチも兼ねるにはちょうどいい。イベントの相談をしていたお客さんもいたりするのが吉祥寺の穴場っぽい。ハンガリーのグヤーシュと簡単なデザート、コーヒー。1188円だったかな。ビルが古いせいか、水が臭いのだけは難点だけど、コーヒー安いし人は少ないし静かだし、遊佐さんに教えてもらってよかった。
古本屋もよみた屋とかいろいろ考えてたけど、藤井書店と古本センターだけ。それでも充分なのかな。
ディスクユニオンWilliam Basinski「The Disintegration Loops 4」805円、NISENNENMONDAI「トリ」385円、Andrew Chalk「Over The Edges」1080円、おやすみホログラム「2」875円。
渋谷に出て、即7th floorへ。最初のアクト、儀式を最初から見るつもりだったけどまあそんなわけにはいかず、半分くらいから。儀式って何やるんだろ、と思ってたら本当に祭祀で、発声が本格的なのでかなり儀式。なかには退屈そうにしてるひともいたのが信じられないのだが、興味津々な30分だった。もちろん本格的といっても多少遊んでる要素はあるけど、これはまた見たいので、もし星ト獣のレコ発を関西でもやるなら、ぜひ儀式もやってほしい。小冊子を200円で買いました。そのあとは馬喰町バンド、ツチヤニボンド、そして星ト獣。岸田さんが叩いてるバンドはだいたいいいので、数年前に見た記憶はおぼろげながら見にきたわけだけど、たぶん数年前よりずっとよくなってる。ドライブ感がかなりある。
ただ、思ってた以上にライブが押して、かなりひやひやする展開に。そうなると終盤があまり楽しめなくなるので、なにかともったいないんだけど、こればかりは仕方ない。バスに乗り遅れるわけにはいかないし、仕事に遅れるわけにもいかない。その範囲で楽しむしかない。
余裕があったら渋谷を往きかう人を眺めてみようとかバス前の炭水化物にそばでも食べようとか考えてたけど、むしろ走るくらい。おにぎりだって値段も見ずに買ってしまった。
そのおかげで東京駅では少し余裕があり、トイレも歯磨きもきちんとできた。トイレはそこそこかな。嫌悪感というほどではない。それにしても、夜の東京駅の構内にこんなに所在無げな人がたくさんいるとは思わなかった。ベンチで間隔を空けて座ってる若い人お年寄りおじさんおばさん。こんな時間に座り込んで、どこに行くのだろう。どうするんだろう。
バスに乗り込む。
遅延がほぼなくて時間もちょうどいいので最近の定番にしてるバス会社だが、運転手の振る舞いはわりと乱暴で、待遇とかも悪そうだ。少し心配だ。
あっという間に熟睡。