怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

美術館に始まり影野わかばで終わる一日

朝から横浜へ。気持ちのいい風に吹かれて横浜美術館へ到着。蔡國強展「帰去来」を見る。花火を使った手法に独自性のある作家だが、新作などを見ると墨の代わりに花火を使ったとでもいうような作品に見える。もちろん偶然性などを求めていることもわかるが、技法に習熟した今、偶然性の要素は相当減っているように見える。そうなると、その技法だけで評価できるわけはなく、何を見ればいいのかというと。展示で最も面白かったのは花火の映像や制作風景で、あとは「壁撞き」かな。これはダイナミックだし素直に良い。ベルリンの壁ってこんなに低かったのか。
というわけで不満な内容。大作ばかりだから点数が少ないのは当然なのだが、出口でおじさんが「これだけ?」と係員に聞いていたのは点数の問題だけではないと思う。少なくったって満足感があれば誰もそんなことは言わない。
常設展はわりといつも面白い横浜美術館だが、今回は違った。「戦争と美術」というテーマがあって、それ自体は悪いことではないが、作品のレベルはそう高いわけではない。最も素晴らしかったのは濱谷浩「敗戦の日の太陽、新潟」かな。「なぜ撮ったのか自分でもわからない」からこその作品だった。あとは柳幸典「ヒノマル」か。
一応時間はかけたつもりだがそれでも予想より短い2時間半で終了。
渋谷へ。空腹につきラージマハールでマトンカレーランチセット。巨大ナンにびっくり。カレーはまあまあ。さらっとして悪くはないけど、お勧めというほどのものではないか。レジ前でいただいたフェンネルがおいしかった。
トーキョーワンダーサイトはお休みなのでヒカリエへ。小山登美夫ギャラリー山本桂輔展「むかしむかしむかし」で、これは一目で遠野物語な神話世界。フォークロアな風景がひろがっていて、アートとしてどうかという評価軸ではないのだが、なかなかいいものでした。
その隣では山田かまち展。丁寧に書いたような構えた絵や詩よりも落書きのように書かれたものに痛切さがある。単に上手いだけなら芸大を目指す高校生はもっと上手い。けれどもそんなところに絵の価値はない。無に近づいた心が知らず知らず表した、そんな部分に僕は興味を持つし、その最たるものが「最後の晩に描いた絵」なのだろう。展示室の中央にはエレキギター山田かまち本人のように祀られている。驚いたのはお母さんが会場にいらっしゃったことで、もうかなりの年齢のはずだがとてもお元気そうだった。
病院。状態は変わらずとのこと。紹介状の話をしたら適当に片づけられたが、また自分で探さなきゃならんのか。面倒だなあ。
初台へ。ケンジタキギャラリーで塩田千春「家のかたち」展を再見。ヴェネチアの図録を買う。図録といっても塩田千春のキャリアを総括するような構成なので、お得なような薄いような。気になっていたポスターのことを聞いてみたら、あれは裏面にもいろいろ書いてあるものでポスターではなく来場者が誰でももらえるものらしい。ポスターはもっと大きい(A0?)ので貼れないから代わりに貼っているとの由。見に行けないのが残念だが、欲を言ったらきりがない。
ICCへ。Sachiko.Mと大友良英による作品は予約制だが今ならすぐ体験できますというので真っ先に行ってみる。このFilamentという作品、無響室を使っているのでそうどこでも体験できるものではない。詳細はあえて省くけれども、この二人ならでは、無響室ならではの作品で大満足。なんならもう一度行ってみたい。その他の作品は既見もあるし初見のものもあまりぱっとしない。作品の見据えているもの、コンセプトがいかにも古臭く、だれがどういう方針で集めたのか詰問したいくらいだ。まあ所詮はNTT、お役所ですね。
一旦帰宅。というのも、処方箋は今日薬に替えるしかないので。居合わせた親子連れ、もう少し子供を躾けてくれないかと思う。子供なんてそんなものといえばそうなのだろうが、やはり限度はある。
新宿へ出てカールモールへ。いつもなら開演から見ようとするところだが、今日は本来ライブを見る予定ではなく、ただ今日を逃すとしばらく影野さんを見る機会がないし思ったより元気だから行こうかと。こういうとき予約不要は助かる。
カールモールはWild Side Tokyoの上にある店で、入ると喫茶店かスナックだったところのようだ。昔のままの内装は埃をかぶったゴージャスさでこれはいい雰囲気。よくわからなかったけど下が楽屋になってるのかな。タイプとしてはソウルキッチンに近いけど、密室感のソウルキッチンに対しゆったりした空間で僕はこっちが好きかな。アマレットジンジャーもしっかり辛口を使ってて美味い。
Ayame the cassisの途中から。着いてすぐは耳が落ち着かないのであまりきちんと聞けてないが、悪くない感じだったような。
次が影野わかば。このライブバーは高音がやけに強く出て低音が薄い仕様になっており、影野さんの高音が強い声質には全くの不向きでかなり聞きづらくなる。これはPAの腕ではなく、あの機材だと仕方ないんだろうからスピーカーが今のままでは改善は見込めそうもない。そこは慣れるしかないとして、持ち時間が短い分曲目は代表曲揃い。短いから演らないかなと思っていた紳士もやった。とかげさんの歌世界を十全に表現するには持ち時間がある程度必要で、30分でも短いくらいだと思ってるから、今日はあまり満足できないかなと思っていたら意外にそうでもない。短いなりに濃密な音楽をぶつけてくるから、パンクバンドのライブによくある疾走感があってこれはこれでいい。なんでも体験してみないとわからないな。
松本裕、oyuu、中田真由美と続くがどれも真摯に音楽と向き合った弾き語りで聞きごたえがあった。いろんなタイプがあっていいけど、僕にはこのほうが向いてる。Aardwolfというひとの企画で、遅くなるからご本人のは聞かずに帰ってしまったけど、このラインナップからして信用できる人だなと思った。
影野さん、あちこち遠征の計画があるようでアクティブでなにより。うらやましい。