怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

影野若葉レコ発東京編(東京の終わりに)

早めに起きて風呂に入ったり支度したり。カプセルは嫌いだけど、どうせ寝るだけだしこれはこれでいいか。
まずは東京駅。前回と同じ場所のコインロッカーに放り込む。
松屋にていつも通りの定食。決まりきった形の店で決まりきった音を聞きながら決まりきった定食を摂取する。どういうわけかこの変哲もなさこそが醍醐味みたいな気持ちになってくるから屈折してるなあ。
まずは森美術館のサンシャワー展から。相変わらず大嫌いな森美術館のほうから。僕はなんでこんなに森美術館が嫌いなのかを語ると長くなるのでそこは割愛して展示をぐるり。作品は当然ながらアジア諸国の生活や政治経済事情に根ざしているものが多く、日本の感覚そのままで見るわけにはいかないので、きちんと見るなら長くなるし端折るとつまらない。とはいうものの、きちんと見ても問題提起としてはともかく美術作品としてここで展示するべきレベルに達しているのか疑問に思うものがかなりある。誰が選定したのこれ。森美術館はいいときはいいけど、悪いときはほんとに展望台の附属施設みたいな場所に成り下がってしまい、職員たちも全くそのレベル。観光施設としてのステイタスしか考えてない。そんなわけでやや徒労感はありつつも広い森美術館を一周し、最後に若手作家の紹介コーナー。こちらはまずまず。今回一番良かったのは
最後にインドネシアのエッグマラカスを1080円で購入。使うとは思えないがまあいいじゃないですか。
デカビタかなんかで燃料を入れて国立新美術館へ。こっちはどうなんだろうと思いつつ見始めると、やはりそこは格の違いなのか。見せ方がいいというのもあるだろうが、作品は明らかにこちらの方がレベルが高い。
最後にお店を模した作品があって、無駄な消費云々というキャプションがついているのだが、その無駄さこそが消費というものの本質なのであって、無駄さを楽しむことでそこに気づくという意味なのだろうと思う。というわけで僕もちっちゃなおもちゃなどを買ったわけだけど、薪とかいろいろあっていいものでした。
時間の制約でじっくり見れなかったのが残念。
続いてジャコメッティ展。こちらはもうジャコメッティなので良くも悪くも安心して見れるわけだけど、人間を見ながら制作しても彫刻はどんどん細く小さくなって悩んでたというのが可笑しかった。本人は大真面目なんだけど。
見終わって新宿へ。ジャコメッティが少し早めに終わったけど結局時間はなくて大急ぎでバーガーキングでアングリーアンガスバーガーを食べる。これかなり美味しいのでまた食べたい。
そして今回最大のイベント、影野若葉レコ発東京編。
またこの新宿JAMに来れたのもうれしいし、ここのステージは影野さんによく似合ってる。そして「別れの夏へ」で影野さんの今まで見られなかった魅力を引き出したバンド編成。もしかしたら二度とないかもしれないバンド編成。
出演者の顔ぶれが豪華だからというのもあるだろうがなかなかの盛況。僕だってもし影野さんが出てなくても興味を惹かれるイベントなんだから当然だろう。18時半の開演トップバッターが高橋絵実&センチメンタルルリイロだからそりゃ贅沢。先日かつおの遊び場で見た岡田さんとのデュオ編成もなかなかだったのだが、このバンド編成はそれよりもさらにいい。ボーカルの魅力たっぷりだし演奏もとてもいい。これだけでも満足できるレベルのライブ。
2番目がatomicfarm。このバンドだけは予備知識が一切なかったからお休み気分があったのに全然そんなことがない。静岡のバンドなのだそうだけど、こんないいバンドがいるのは驚き。関西には来たことがあるのかな。僕が知らないだけなんだろうけど、最近自分の力で発掘してゆく気力が薄れている証拠だな。
3番目がふれでりっく書院。山田庵巳さんのバンドというからにはどんな違ったことをやるのかと思っていたら、これがなんとそのまま。あのソロがバンドでできるわけがないという思い込みをひっくり返すライブで、方向性を全く変えないまま力を増すという正統さ。これは関西に来る可能性は低そうなのでほんとに最初で最後になりかねない。
4番目がサロメの唇。もちろん名前は知っているんだけど、ニューアクションが好きな僕としてはそっちのけになってしまっていたきらいがあり、結局これが初めて。個人的にはやはりニューアクションが好きだし、ボーカルとフルートの共存が難しいことを特に序盤で感じたりということもあったが、でも人気あるのはわかる。聞けてよかった。
そして最後、ついに影野若葉バンド編成。といっても最初はソロ曲からだけど。
獏での活動はあるにせよ、ステージに一人で座っている姿しか見たことがなかった僕にとって、バンドを引き連れた光景はちょっと感動的ですらある。僕がもともと女性弾き語りには関心が薄くて、バンドのほうが好きだからというのもあるが、これはステージの高さがぐんと上がったような気がする。
影野さんのスケジュールからしてもそう多くの練習ができたわけではないはずだが、にもかかわらずぶつかり合うことのない調和のとれた演奏で、リズムセクションがしっかりしているのとそれぞれがでしゃばらずに主役を立てる演奏に徹しているのだろう。長いことやってるくらいの安定感がある。陶然と聞き惚れているとあっという間。もったいない。本編の最後は予想通り「車輪の下」で賑々しく、それが宴の終わりを思わせてちょっと寂しい。まるでこのバンドが今日で終わりみたいじゃないか。東京でのレコ発だからできることなのはわかるけど、アルバムがこれで最後とは限らない。いずれまたということだってあるかもしれないしあってほしい。
豪華な出演者だから来たひとも多いだろうが、明日平日にもかかわらず帰る人はほとんどなく、じっとステージに集中していたあの雰囲気は本物だと思った。
アンコールはこれも予想通りのソリスト。曲調も歌詞も締めくくりと区切りと別れと旅立ちにふさわしい。すべてが込められた弾き語りのあの空気は忘れることができないだろう。
そんなわけでダブルアンコールになり、やはり影法師で大団円。あのころとは比較にならないほど成長したはずのとかげさんが、しかしいまもあのころのとかげさんの影をまとっていることを感じさせる締めくくりだった。
インストアとディスクユニオンを立てる影野さんにもかかわらず物販も盛況なのがまた感無量。そうだよこういう光景だよ僕が見たかったのは。
先日のお詫びと今日の感動を手短に伝えてさっさと退散。こうでないといけない。バスの時間が迫っててよかった。
一人で駅に歩く道は寂しいけれども、でも楽しい思いをあのオンボロビルの地下でいっぱいにしてきたからいいんだ。こういう夜道なら何度だって歩きたい。僕は飛ぶように歩ける。