怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

影絵の夜会という幻

会議は眠い。
夜は一旦家に帰ってから扇町パラダイスへ。
開場後間もないくらいの時間に着いたのに、すでにかなりのお客さんが来ていた。扇町パラダイスは独自の色というかファミリー感の強いライブハウスで、それが客席の雰囲気を作っていた。僕はそういうのは苦手なはずだけど、その中心に影野さんという存在があるからなのか、馴染みやすい(といっても年齢層からいっても場違いには違いないが)空気になっていた。
影野若葉vs皐乃一座としての「影絵の夜会」大阪編。
第一幕は皐野一座としての朗読歌劇『ここは楽園』。
懐かしい黒髪のウィッグをつけ赤い着物を羽織ったとかげさん。そう、とかげさん。
この演目の柱は影野若葉ではなく影野わかばでもなく、とかげのわかばによる朗読である。ずいぶん前にとかげのわかばから影野わかばに転生しているようでいて、やはりとかげさんこそが影野さんの核の部分と密接に結びついているのだと思う。こうしたときに折々顔を出してくるとかげのわかば。僕は今もとかげのわかばのファンなのだと強く思う。
とかげさんは、ステージを降りているときはもちろん、影野のときともまるで違う表情を見せている。ステージで歌っているときもかなり集中している影野さんだが、この朗読のときはそれ以上で、集中どころかトランスしているように見える。こういうときに、とかげさんの役者としての顔が見える。考えてみると、影野若葉としての活動も、広い意味での役柄というものなのかもしれない。
とかげさんはナレーターとして朗読し、そこにthanによる演奏と歌、渡莉町子さんと山本連理さんによる芝居と踊りという組み立て。歌物語では自作曲を中心にしていたものを、ここでは他のバンドの曲を取り入れて組み立てているのだということに気づく。ソロとしての活動ではなく、あくまでも一座の座長だという意識からの構想なのだろう。他のバンド、他の詞だから、僕にとっては話の転がりかたの見当がつきにくく、そういう意味でも新機軸だった。出演陣のなかで連理さんは通し稽古がほとんどできない状態での公演で難しかったと思うが、終始堂々として舞台をコントロールしていたように思う。
この連理さんは夢見菓子という菓子店もやっており、酒を飲まない僕にはおつまみよりこっちのほうが興味津々だった。パウンドケーキを3つ買い、1つをその場で2つを妻と食べた。クッキーもあったのでいつかそちらも食べてみよう。
第二幕は影野若葉バンド編成。こういう節目の舞台でバンド編成をぶつけてくるのだから影野さん自身もバンドという形態に手ごたえを感じているのだと思うが、パーマネントに活動できるほど容易なものではないからこそのハイクオリティという面もあるのだろう。以前杉瀬さんが「弾き語りは早く辞めたい」と笑わせていたのを思い出す。影野さんは辞めたいわけでもなんでもないだろうけど。
ギターはアルバムにも参加していた山中タツマ、ベースはヒラタ、ドラムがtatoOという構成。東京でのバンドメンバーに知名度では劣っても実力は全然負けてない顔触れで、影野さんの歌とギターを盛り立てながらでしゃばらず、しかし存在感はしっかり主張するというバックバンドのお手本のようだった。
アンコールの弾き語りも終わって、時計を見ると1時間経っていた。あっという間だったのに。もっともっと集中してしっかり聞きたいくらいだったし、僕にできそうなことはそれくらいしかない。でも祭は終わる。終わらなかったら祭ではない。生誕前夜祭なんだから、終わらなければいけないのだ。残念だ。でも残念に思うくらい短いのが幻というものだろう。
なぜ生誕前夜祭なんだろうと思っていた不器用な僕だけど、そうかこのまま日付変わって皆に誕生日を祝ってくださいということなのか。そりゃその方がいい。
物販に懐かしいDVDを見つけた。誰かが今日買ってくれたら僕もうれしい。もし悩んでるひとがいたら、お金くらいなら出す所存だ。
華やかなパーティに移るところでパラダイスを後に。とかげさんにご挨拶できてよかった。
おめでとう。