怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

東京2日目

ぐっすり眠れて快適な目覚め。余裕もって支度というほどのこともないが渋谷に出かける。恒例になってきたかつやで朝食。しょうが焼き定食を食べる。朝から揚げものというダイナミックさには欠けるが、それでも燃料充填らしさは充分。朝からこんなもん食べてる人がそこそこいるってのも不思議なもんだ。ガラス扉の向こうで行き交う人々を見るのも楽しい。
時間ちょうどに松濤美術館へ。早くも暑くなってきた。2度目になるが、相変わらず美しい建物と品の良いおばさま方だ。
数年ぶりだが、上質な建物と品のよいおばさま方に迎えられるこの美術館は心地よい。以前は喫茶室があったようだが、一度利用したかった。
今回は「クエイ兄弟」展。葉山での展示に行きたくても行けなかった身としてはこの巡回はありがたい限り。無理しなくてよかった。それにしてもやけに間を置いた巡回なのはなぜだろう。どこか予定に狂いがあったのだろうか。
展示はクエイ兄弟をこの道に進ませたポーランドポスターからだが、やはり見どころは彼らの作品。映像はダイジェストしかない大人の事情で、気持ちが入り込んだところで次の作品に切り替わってしまうのはもどかしいが、デッサンや版画その他の平面作品が素晴らしい。カフカを題材にした作品もあって、見ていると再読したくなってくる。独自の美学、独自の感性、それが僕の影の部分に刺さってくる。そういえばデコールや映像を見ていると随所に影野わかばさんの歌物語を彷彿とさせるような感覚が随所にある。彷彿といってももちろん違う。同じのはずがない。だがきっとこの作品群から匂いたつものは影野さんのどこかを刺激するはずだ。そんな余計なことをふと思った。
東京で美術館を回るときは一周だけと決めているのだが、名残惜しく2周。なんにせよ、行けてよかった。
駅まで戻り、ヒカリエとNANZUKAの田名網敬一。田名網さんはいつもの路線なんだけど、外国人の3人組がうれしそうに作品の前で写真を撮り作品集を買いという姿が印象的だった。広くなったせいもあって今まで以上にトリップ感があり、ドラッグ経験があるのとないのとでたぶん印象も変わってくるんだろう。
実はここでディーゼルに行かなきゃいけなかったのをすっかり忘れていて、まあしょうがない。
駒込倉庫でチャイ・シリ「想像をこえた共同体」。サンシャワー展に連動するかのように各ギャラリーでアジアの作家を取り上げていて、ここもその一つ。で、この名前も知らなかった作家の作品が驚くほどよかった。これはすぐに名が上がるだろうと思うからアートに投資する人なら間違いなく買いです。日暮里からSCAI THE BATHHOUSEアピチャッポン・ウィーラセタクンMemoria」。こちらはまず予想通りで、駒込倉庫の直後では色褪せてしまう。
そして銀座に移動してエルメスでエマニュエル・ソーニエ「ATM tempo I/II/III セロニアス・モンクに捧ぐ」展。以前のエルメスそのものといった展示。シャネルネクサスホールの荒木経惟「東京墓情」はさすが荒木、いい写真が目白押し。ギメの所蔵品を出す意味はそんなにないと思うのだが、とにかく荒木経惟の写真がいい。これが無料とはありがたい話。図録も作られていて閲覧可能だったのだが、係員に聞くと非売品とのこと。ああそうですか、どうせ大口顧客に配るんでしょ、貧乏人はおよびでないよね、はいはい。まあでも展示はじっくり見させていただいた。ミヤギフトシの再見はあきらめて新宿へ。
YUMIKO CHIBAのハイレッドセンター展。今は後期だが前期のドキュメントフォトはもう見てるし、三人の作品が見れる後期でよかった。
ampmに逃げ込んで炭酸をグビグビ。ampmだから椅子があるんだけど満席だったのは当てが外れてしまったな。
オペラシティで荒木経惟「写経老人A」。これは完全に外れ。同日に「東京墓情」を見てしまっているからとはいえ、このスカスカの展示はなんだろう。あれもこれも心血をそそぐわけにはいかないからしょうがないんだけど、これで1200円ですかと思うと暴動もの。僕も良いところを探そうとは思ったが、これは無理。荒木で後悔することになるとは思わなかった。まだしも4階のコレクションと森洋史のほうが見甲斐があった。
高円寺へ移動、と思いつつよくよく確認したら中野でした。危ない。
中野というところには不思議と縁がなく一度も行ったことがなかった。今更行くことになるなんておかしなことだが、時間はないからあまりふらついてもいられない。TYM344個展「HARD/SOFT」の1日限りの個展という「NEVERUNDERSTAND」に来てみたのだが、会場の片方ではなんの芸もない映像とビートが流れるだけ。もうひとつでは普通に作品が展示されているだけで、「一夜限りのTYM344個展」という惹句に値するようなものは何もない。貴重な時間、ライブに費やすべき時間を投じた結果がこれだよ。泣けてくる。いまさらどこかのライブに行く気もせず、ふらふら酔いに任せて高円寺に歩く。その前にとりあえずディスクユニオンへ。神々のゴライコーズ「ピクニカル」309円、アンダーボーイズザライド「ハードデイ」210円、KETTLES「ビー・マイ・ケトル」330円、CELER「How Could You Believe Me When I Said I Loved You When You Know I' ve Been A Liar All My Life」520円、ASUNA & OPITOPE「THE CREPUSCULAR GROVE」1000円。昨日気に入った神々のゴライコーズの廃盤CDが早速手に入るとは。ちょっとご機嫌が直る。
さて高円寺で「HARD/SOFT」の本展のほうを覗き、まあこっちだけ見とくのが正解だよなあとつくづく思う。こっちだけなら悪印象はなかった。いいよ。ナオナカムラさんは信頼できるキュレーターだし、だからこそ来たんだけど、あっちの会場のことを本音でどう思ってるんだろ。まあいいけど。
さてどうする、ってわけだけど、思い立って高円寺の名曲喫茶ネルケンへ。そうだ、こういうことでもないと名曲喫茶でゆっくり夜を過ごすことなんてないんだし。品の良い老嬢に迎えられチェンバロを聞きながらゆっくりコーヒーを飲む。いいなあ。できればレコードと言いたいとこだけど、店を続けてくれることに感謝しなければならないくらいだからそこはCDでかまわない。いや、思った以上にいい時間だった。
最後に近くの西友で夕食を仕入れて宿へ。これはこれでいいのかな。