怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

11時すぎに寝たんだから早起きすると思い込んだのが運の尽き、起きたら8時前。よくこんなに寝れるな。壁が薄くても目覚ましはかけるべきという教訓もそこそこにダッシュで宿を出て、定光寺駅に行くのは無理だろうからまた中村遊廓へ足を向けた。
ひと通り街めぐりをして、明るいからこその発見もあってなかなか満足。ロビンという小さな喫茶店でモーニング。思ったほど鄙びてなくて、朝4時から開いてるというからすごいが、おばあさまとおばさまが切り回していて気持ちいい。
その後またしばらく街を歩き回り、鳥勝という名古屋コーチンの店でつくねを一串買い、稲本という遊廓の建物が近々取り壊しになるというので見納めがてら再訪。立派にデイケアで使われてるように見えるが、維持費が嵩むのは明らかなので仕方ないんだろう。仕方ないんだろうが、しかし惜しい。
地下鉄で豊田市美術館へ。まさかこんなに早く再訪するとは思ってなかった。
「ビルディング・ロマンス」展は1階の展示室で構成され、基本的に1作家で1点1室。アピチャッポン・ウィラーセタクンの「花火」こそ既見だが、もう一度見たかった作品だから大歓迎。のっけの志賀理江子さんの作品からして圧倒感がある。「ロマンス」とは、この展覧会ではそれぞれに内在するなにかを意味し、それを表出させることを「ビルディング」と称しているのだと思うが、志賀さんの作品はたしかに人の中にありながら意識されることのないものを掴み出しているように思える。そういう意味では、この展覧会は志賀理江子に尽きる。飴屋法水の「神の左手、悪魔の右手」はそこまでの成功はないように思える。ウィラーセタクンは良い作品ではあるものの、浮かび上がる歴史や人生は一般的な「ロマンス」に近い。まあ「ロマンス」の意味は少しばらけさせていると考えたほうがよいのかもしれないが。
コレクション展のほうはこれも充実で、特別展とは別個とはいえやはり関連性の高い作品が並んでいる。そして質が高い。奈良美智展のときはコレクションに割かれていた展示室はわずかに1室だったので気付かなかったが、僕の好む作品が数多くあるようだ。特に良かったのが小泉明郎「Defect in vision」。得意の2面プロジェクションを巧みに使った構成と、作り手をわざと映しこむざっくりした撮り方がむしろ迫真さを生んでいること、言葉の意味が徐々に変化し落とし込まれていくところ、見事としか言いようがない。
ランチは館内のレストランで日替わりのカキフライ。約1000円はちょっと高いが、眺めはいいし外に出るのは時間のロスが大きいので、待ち時間がないなら積極的に利用できる。
その後は主に搬入プロジェクトに参加。展示とひとつではあるけれども、これはむしろ参加することに意義があるタイプなので、このあとの会期に来たひとは残念な思いをするのでは。当日の様子を映像で流してもいいくらいだけど、それはそれで展示のほうのコンセプトを損なうし。
そんなわけで満喫し、夕方にさしかかってきたのでショップへ。本をいくつかセールしていたが決め手に欠けたのでポスターだけ購入。扱いづらい荷物を持ったせいでコインロッカーの100円を回収し損ねた。これでたぶん3回目くらいだろうか。馬鹿なことをしたものだ。
名古屋では電車までの時間があまりないので、思案した結果、鶴舞の喫茶新潟に立ち寄り、しばし休憩。座ったのはもちろん麻雀ゲームの卓。そこそこにレトロな店内、けっこう元気そうなご主人。タバコも吸わないのにマッチを頂いてしまった。
もちろん夕食も必要なので厳しい残り時間を使って角屋に行ってみたのだが折悪く満席なので引き返し、ますます時間がないなか、駅ビルの味仙に行くもさらに行列。万策尽きて、昨昼見かけたおにぎり屋、「にぎりたて」で天むすでも買うかと探したところ、ようやく見つけたのはいいが天むすその他めぼしいものは売り切れ。泣けてくる。名古屋人食いしんぼすぎ。しかし売れ行きは良さそうだし、味には期待できるから、野沢菜・牛しぐれ・いわのりを購入。どれもコンビニとたいして変わらない値段ながら、味はなかなかだったのでそりゃ繁盛する。この選択はよかった。ここまでは。
あとは電車に乗り込めばオッケーなのだが、ここで出発の時間を勘違いしてしまった。理由は、スマホの案内で出てた行先が本来乗るべき列車のものと違ってて、行先で判断してしまったというのがあるのだが、急行か普通かとか、もう少し考えればわからないものではなかったはず。時間ギリギリってわけでもないんだし。気付かないまま電車でおにぎりを貪り、荷物の処理がおざなりになった。まあ多少迷惑かけたとは思う。だが、だからといって、少し倒れかけたポスターを背中で押し潰すのは悪意が過ぎる。たった300円のポスターだし、損害としては知れてるけれども、こういう悪意はほんとこたえる。自分の至らなさもこたえる。
ただ、話はそこでは終わらなかった。ようやく落ち着いたので駅の名前を見ると、調べたルートでは見慣れない名前。時間的にも全然おかしい。そこでようやく電車に乗り間違えたことに気がついた。何をどうしようが、本来の列車に乗るのは無理だ。鈍行では大阪に着くのは0時を回るから、難波あたりから歩く羽目になる。元気ならできないことでもないが、そういう気力はさっき失った。
つまり、特急に乗るしかない。
なんてバカな間違いをと思ったが、もうどうしようもない。結局桑名まで行って特急に乗った。
乗り間違いは、結局急行か普通かということに尽きる。1分早い急行に乗るべきところ、スマホの表示で出てた行き先と駅の表示が違っているため気づかず、同じ行き先で1分違いの普通列車に乗ってしまったというわけだ。ここを勘違いしてなかったらあのおっさんなんかに出会うこともなかったろうにというのも悔やまれるが、まあスマホに少し違いがあったといっても、駅員に聞くなりする時間もあるのにそれをやってないんだから自分のせいだ。どうしようもない。
豊田市美術館を出たところまではウキウキしてたというのに、帰り道がこんなではなあ。情けない。
しょんぼりと、でも妻にはそんな顔は見せずに帰宅。