怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

祝:岡本太郎現代芸術賞。

午前中はそうでもなかったが、昼から雨。雨だが、今日か来週土曜しか行けないからには、今日行くしかない。
マルハニチロのタイカレーを食べて向ケ丘遊園へ。途中でアルトバイエルンも食べたけど。
向ケ丘遊園の駅は跨線橋がJRを思わせるつくり。雨の中を生田緑地に向かう。雨足はさほどでもないが、なにしろ風が強い。ただ、そのおかげで人の気配がないし、緑地は雨で美しく光っている。意外といいじゃないか。
誰もいない(わけでもないが)緑地の中を歩いて岡本太郎美術館に到着。入口がわからなくて相当うろうろしたけど、なんとかエントランスを発見。城か。
中に入るといきなり豚の着ぐるみがお出迎え。後でわかったが、サエボーグさんの作品パフォーマンスの一環だったようだ。ラバーの質感と異世界の動きによる気持ち悪さが小気味いい。上々の出足。今日はお茶会もありますというので先にそちらへ。赤い毛氈の上で抹茶と最中を頂く。作法はあまりわからないし教えるというわけでもないようなので何のことやらだけど、初体験の茶席。二度目のために度胸をつけた格好。
岡本太郎美術館はまず「岡本太郎とオリンピック」展から。どの作品も岡本太郎色が強烈で、言い換えると作品の幅は案外狭い。なので一通り見てしまうと食傷気味であり、時々なにかの作品をぽつりぽつりと見たほうが味わい深いような気がする。岡本太郎が出演したCMも上映されていたが、「芸術は爆発だ!」で弾いているピアノが実はちゃんと弾いていて、これ記憶と全然違う。幼少のころはフリージャズなんて知らなかったから、デタラメに弾いているように見えたんだろうか。
続いて「第17回 岡本太郎現代芸術賞」展。入ると右手奥にキュンチョメさんの作品が見えるので、そこを最終目的地と考えて各作品を見て回る。
展示室を20点の作品が埋め尽くしているのでやや手狭。そして一応は選ばれた作品ではあるけれども、僕から見るとやや疑問符のつくものもある。
そんな中で群を抜いていたのが、やはりキュンチョメとサエボーグ、つまり岡本太郎賞と岡本敏子賞の2点だった。
サエボーグの作品はラバースーツの着ぐるみを使って生命の倫理観を問いかける作品。テーマは決して目新しくはない。しかし取っつきやすさを隠れ蓑にした怖さ、キュートな着ぐるみの異質な動作、カラフルだが指し示す造形のグロテスクさ、どれをとっても絶妙のバランス。ご本人とアクターたちのパフォーマンスも熱演で、集客力が高かった。
キュンチョメはまず米を床に敷き詰めているという設えが素晴らしい。もちろんこれは心理的な拒否感を生ませるためで、つまり我々が自然にもっていた拒否反応を無理に乗り越えたところにあったものは何だったのか。そこを根源的に問いかけようとしているのだろう。
これについてはパンフレットで山下審査員から強い異議があったと書かれていた。おそらく山下氏からの強い希望で盛り込まれた表現なのだろう。五人中一人が強硬に反対しての受賞。これ、素晴らしいじゃないですか。そのくらいでないと。もちろん僕は山下氏は見誤ってると思うけど、でもそのくらい挑発的であってこそ岡本太郎賞じゃないかと思う。
作品は立ち入り禁止のテープと毒々しく着色された米で構成されたインスタレーションと、その中に映像作品が2点。
インスタレーションの指し示しているところは明らかだから省くとして、この映像作品も素晴らしい。一つはTRANS ARTS TOKYOで披露されていたもの、もう一つは新作で除夜の鐘を衝くというもの。どちらも、ストーリーとして見ればどうということのないもので、ただ被災地に行って少し変わったことをしましたよというだけのことだ。
だが、それがなぜ心を撃つのだろう。
周知の状況を踏まえたうえで、そこしかないというタイミングで叫ばれる言葉。ありふれた言葉。珍しくもない音。何も特別なことではないからこそ、それが特別に見えてしまうことをくっきりと浮き彫りにし、その余韻を刻んでブラックアウトする映像。
何度も何度も見てしまう。
傍らにはその日キュンチョメさんが書いた日記。それは作品制作のドキュメントという形を借りた、作品を作ったキュンチョメさんのエッセンスだ。ふざけながら、笑いながら、怒りながら、普通に被災地に入り、怯えながら闇を行った行動の記録は、まさに普通と特別の合間をゆらゆらしている。
一瞥しただけで去る人、熟読する人、さまざまだったけど、熟読した人は偉いよ。
作品の前には米袋があって、表と裏にそれぞれ墨書きされている言葉も頭の中で何度も何度も刻まれる。
去りがたいけど、でもこの作品を見れてよかった。
帰りにガチャガチャを一回だけやってみたが、またも太陽の塔はゲットできず。まあそんなもんだよね。
外に出るとまぶしいほどの陽射しで、なんだか行きと帰りが別世界のようだった。
向ケ丘遊園のブックオフに立ち寄るも、棚は取るに足らずで得るものなし。
新宿で伊勢丹に寄り、懸案の財布を品定め。結局エッティンガーの30,450円のを購入。やけに人が多かったのはやはり駆け込みですかね。そういえば伊勢丹で買い物をするのはなんだかんだとこれが初めてだな。
帰宅してホタテグラタン。おいしかった。
夜、越してきた人に頂いたお菓子でコーヒーを飲む。