怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

大阪3日目

昨日より早く6時半に起きて玉出に行ってみるが、やはり弁当は残っていない。これ以上早起きするのは本末転倒だと悟る。
岩屋駅から兵庫県立美術館へ。開館前に着いてしまったが、親切な警備員さんが中で待たせてくれトイレも使わせてくれた。ありがたや。
「キュレーターからのメッセージ2012 現代絵画のいま」展。兵庫県立美術館はファミリー層に阿るような展覧会も多い半面、攻撃的な展覧会もしばしばやっていてこれは攻撃的な部類。印象に残ったのは横内賢太郎、大崎のぶゆき、渡辺聡など。横内賢太郎の作品は斜めから見ると描線が浮き上がってくる騙し絵に近いもので、足早に通り過ぎていては真価がわからない。説明が不十分ともいえるが、客に面白さを探しにいくことを求めるのもいいのではないか。これに限らず、技法にはずいぶん凝った作品が多くてなかなか楽しめたのだが、現代絵画になじみのない人には退屈だったかもしれない。あと、石田尚志の展示は期待していたのだがタカイシイギャラリーでのほうが良い環境だったと思う。
常設展は2階はいつも通りなので足早に通り過ぎ、1階を少しじっくりめに。兵庫県にゆかりのある作家という括りなのでかなりとりとめもない展示なのだが、山本六三や横尾忠則などがあって、まあそれなりの見ごたえ。見ごたえありすぎても困るし。
河合晋平博物館というのもやっていてそれもなかなかだったのだが疲れてきたのでざっと眺めるだけにした。
図録を購入し阪神岩屋駅に戻ろうとしたら通り過ぎてしまった。ぼんやりしてるなあ。さらに車内だかホームだかで切符を紛失してしまうというぼんやりっぷり。もう踏んだり蹴ったりで、梅田でかわいい子供に「ここが終点ですか?」と聞かれても愛想良くできないからひどかった。やれやれ。
バンブルビーに行くとビリヤニの看板が出ていて、そうか今日はビリヤニの日かと思い出しうれしくなって注文したら今終わったところだと。4人組が揃って注文したようだ。阪神を通り過ぎなければ間に合ったのだろうからつくづくひどい。まあそれでも鳥肝を食べたしチャイも飲んだのでいいんですけどね。
柳々堂で月刊ビルを探索。初めて来たけど、面白い店だな、ここ。続いて若狭ビルへ。ギャラリーを2軒とCaloを覗いたが特筆することはなにもないです。
国立国際美術館エル・グレコ目当てのおばはんがあふれる中「宮永愛子 なかそら 展」。これは素晴らしかったですね。ナフタリンで作られた像の儚く美しい素材感が抜群なうえにガラスケースに貼りつく結晶も見事。蝶の作品は正方形のケースに入れられ、下から蛍光テープのようなもので照らされることで最高の視覚効果を出している。作品は申し分ないのだが、残念なのがおばはんで、人が多いのは仕方ないとしてもおしゃべりするわドタバタ歩くわで殺意が沸く。靴音がするのは仕方ないとしても足を引きずるのはやめてくれよほんと。あと携帯で音響かせて写真撮ってるやつとか。まあそれでもじっくり見ていくうちに人が少しづつ減っていくので2時間ほどでまずまずの鑑賞環境になり、一応楽しめた。会期の終わりころだから仕方ないね。見逃さずに済んだだけマシと思うことにしよう。あと、金木犀の葉脈を使った作品は蛇足だったかなと思う。大作が必要だったのかなとは思うけど。
図録も欲しかったが、3360円という値段はちょっとうーんて感じですね。というか特装版のほうが魅力的かも。
ここで一旦ホテルに戻り、風呂に入ってから難波へ。雨が降っていて傘を持ってくればよかったかなと思ったけどまあいいか。そして数年ぶりにかつおの遊び場へ。数年ぶりの割には全く変わってないかつおの遊び場。なす子さんの姿も見える。こんな街には似つかわしくないかわいらしい女の子が居心地悪そうに開演を待っていたり。
とかげのわかばさん、「まやかし白昼夢 第四夜 二匹の幻」は思った通り一つのストーリーの中に曲を埋め込んで構成してゆく演劇的なステージ。セリフ回しはよどみなく譜面台に顔を埋めることもなく、かなりの練習を重ねての舞台だとよくわかる。関東ツアーを終えてからはほとんどこの日のために費やしてきたのではないだろうか。そういう点ではちょっと圧巻というか、そうそう見ることのできないステージだったと思う。
ただ、僕の個人的な嗜好ではあるのだが、音楽は一曲一曲で、あるいは一枚一枚で完結しているものとして玩味したいというところがある。一枚で一つの世界を構築するものではあるけれど、それは音から感じるところを聞き手がそれぞれに受け取るものだとでもいおうか。それは僕がかなりエゴイスティックな、自分自身なりの捉え方にこだわっているためであり、万人には受け入れられない見方ではあるのだが。そうした点では、僕はとかげさんの良きファンだとは言えないのかもしれない。ただ今夜ここで極上の音楽が響いたことはだれにも否定はさせないのだけれどもね。正直なところ拍手を我慢するのは大変でした。
終わってとかげさんから前身バンドともいうべきとかげのしっぽのCDを買った。まあバンドより明らかにソロの方が本領を発揮しているとは思うが、初期だからこその魅力もあるかもしれないのでこれは聞いておくべきでしょうと。
少し話をしてしつこく東京に来るようお願いをしてお店を出た。
雨は降り止まず、盛り場は少しうらぶれて、そこには二匹の幻が見えた。のかもしれない。