怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

起きて近くのセブンイレブンでパンを買って、ホテルで朝食。コーヒーが不味いのは我慢しよう。今回は1泊だけだし、朝食はこんなもんでいい。
チェックアウトして新宿でお土産のバターバトラーを買ってから懐かしの京王線芦花公園駅へ。初めて降りたけど京王線の小さな駅はどれも同じ作りなので既視感しかない。うららかな天気、とことこ歩いて世田谷文学館に到着。「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」展は僕としては待ち望んだ企画で、どんなクオリティでもおそらく満足するような、そういうもの。そして実際見てみると、これがとても充実したものだった。
自筆原稿はもちろん、作品に顔を出すタツノオトシゴの標本や鉱物たち。大事にしていた蔵書、若書きの短い文章。僕が文庫本から想像していたあれこれの実物が目の前にある。素晴らしい。そしてそれらを僕の同類たちが食い入るように眺めている。ただ家で頁をめくるのとは違う感慨がある。そんな中に、石川淳のペン書きの原稿も混じっており、隅には「夷斎草稿」の印刷が見える。僕のためにあるような展覧会ではないか。狭い会場だから1時間程度かと思っていたのに、なんと悠に2時間を超えていた。書斎の再現だけはもう少し頑張ってほしかったが、それでも不満はない。なにしろあの頭蓋骨を持ってきてくれたのだから。それにしても、澁澤龍彦享年59歳。なんだあと9年じゃないか。僕があと9年の命だとしたら、もうあっという間じゃないか。年に1度しかライブ見れないバンドはあと9回ってことだ。冗談じゃない。ぼやぼやしてられないぞこれは。
新宿経由で恵比寿へ。混んでるバーガーキングでお昼を食べて、東京都写真美術館へ。
まずTOPコレクション「シンクロニシティ」。コレクションだが、前回と違って今度は未見の作品が多い。浜田涼の作品群は、ぼかした画面の美しさを追求しており、きれいなだけと言えばそれまでかもしれないが、ちょっと類のない光の美しさを表現していて興味深かった。また、野口里佳「Marabu」も、鳥なのははっきりしているのに、どうにも人のように思えてならない存在を訴えてきて、心に残った。
長島友里枝「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」。若い女性写真家のセルフヌードは掃いて捨てるほどあるが、家族まで脱がせる迫力には圧倒される。その後も非凡な作品を撮っているようだ。
写真新世紀は久しぶり。ただ、須藤絢乃さんらが競った2014年ほどの熱さはなく、今年なら草野庸子さんも南阿沙美さんも文句なしにグランプリだったのでは。まあ単純に僕の好みといえばそれまでだけど。佳作なども見ると、どうも上田義彦と嗜好がかぶってるような気がする。
まあまあいい時間になってしまい、最後に練馬区立美術館で麻田浩「静謐なる楽園の廃墟」展。10年前に京都国立近代美術館で回顧展を見て以来のまとまった展示になる。
廃墟という言葉に象徴されるように、人の遺した痕跡のような物体が埋める画面の吸引力は圧倒的で、また今回はキャプションも充実している。初期から後期にかけての視点の移動などはさすが学芸員という指摘で、こういう有能な学芸員が熱意ある企画に取り組んでいるからこそ、僕もこの便利とはいえない小さな美術館に何度も来てしまうのだろう。展示室が小さく天井も低いから大作が見栄えしないのだが、それでもこうした企画をしてくれるなら訪れたくなるというものだ。
結構へろへろになりつつ、高円寺へ。とよんちは今回も空振りで、アニマル洋子三島由紀夫豊饒の海3 奔馬」100円、BOREDOMS「スーパールーツ」「スーパーゴー!!!!!」各300円。
ギリギリに高円寺Moon Stompに滑りこみ。小さなライブバーはさすがにほぼ一杯で、でもなんとか座れる余地はあり、落ち着いて聞くことができた。
最初によしむらひらく。もうじき音楽活動を小休止するというが、そもそも楽曲のクオリティに見合った評価を受けていないのがすべての根源なんじやないだろうか。バンドでも素晴らしいグルーブを出すし、本来ならもっともっと大きなホールを埋め尽くしたっていいはずなのに。今日もいつも通り、セットを決めず、素顔の演奏だった。
橋本岳志 with 遊佐春菜、ときどき小森清貴。
どんなユニットなのか予備知識は全くなかった。ニューアクションを断念してこっちに来たからには、よしむらひらくだけでなく橋遊佐でもいい演奏を聞きたいとは思っていたが、決めた以上は予備知識は持たずに臨んだ。橋本さんのボーカルがとても上手い。あまり上手いひとは正直苦手なんだけど、不思議なことに苦手にならない上手さ。このあたりは曲にもよるのかもしれない。そしてそれ以上に驚いたのが遊佐さんのサポートで、目立とうとせずボーカルをそっと引き立てるキーボードの入りやコーラスがほんとに絶妙。脇役に徹することで逆に主役を食っているという、まさに脇役の手本のような演奏で、これはいくらでもオファーが来るはずだ。フロントマンとしてツインボーカルの片割れとして立つ壊れかけでは見れない一面で、もしかしたらこっちのが向いてるかもと思ってしまう。いやそうされたら困るんだけど。
7時開演のツーマンなので終演も早めで、正直助かる。挨拶だけして店を出る。よしむらひらくさんが覚えててくれたのはうれしかったなあ。
余裕があるので富士そばに行ってそばをかき込んで東京駅へ。歯を磨いてバスに乗車。余裕はあったけどその余裕を使ったのでちょうどギリギリかなというところ。
席はなんと一番前で、これは寝心地悪そうだと内心がっかり。指定できないのはわかってたが、外れもいいとこだ。文句言ってもしょうがないけど。