怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

青春18きっぷの旅Part.2

寒くて目が覚める。いつものことだが、寝る時点ではそれほど寒くなるとは思ってなかった。それもいつものことか。靴下をはきTシャツを重ね着すると少し暖かくなった。対策もいつもどおりだから最初からそうすればいいのだが。
あまり眠れないので起きる。6時半。眠りは足りないがこの時間ならそう悪くもないか。ストリーミングを見たりマンガを読んだりすると7時半。郡山行きの電車の時間を調べると意外にも少ない。慌てて支度して飛び出す。会計は2160円。最後にもう一度ソフトクリームを食べたりコーヒーを飲んだりしたかったのだが、計画性のなさよ。
少し早足で駅へ。列車はすぐやってきた。
郡山へ。ここで3時間半ほどの時間があるが、どれほど楽しめるだろうと思いつつ駅の西、堂前町方面へ進む。途中でどこかモーニングでもと思うがそもそも喫茶店が見当たらないしやっと1軒見つけたのは「スナック・喫茶ミラノ」の看板。中が全然見えないしメニューも外からわからない。怪し系の喫茶店と判断してスルー。普通は入らないよこれは。
ぶらぶら歩いていると「たけや」という店を見つける。おにぎり屋のようで店頭におにぎりなどが並んでいる。よく見ると結構人気店のようだ。外からはわからないが中は常に注文待ちが7人ばかしいる状態だ。僕は鮭と昆布を注文。包みにくるんでもらった。専門店ならではの味わいだ。ちなみにおはぎや柏餅、赤飯や惣菜も売られていて、どれも人気があるようでどんどん売れてゆく。
向かいにある如宝寺の境内にベンチがあったのでそこでおにぎりを食べる。塩気は強めで、柔らかいおにぎり。そこに沢庵が添えられてるのもまたをかし。おもいがけず地元の味を楽しめた。
そのあたりからスナックの看板が目立つようになり、南側は料飲地帯だったようだ。“だった”というのは、もう営業してない店や取り壊されて更地になってる区画、駐車場になってる土地がかなり多く、歯抜けになってしまっているからだ。ただもしそれらがほとんど飲み屋で埋まってたのだとしたら、かなり大きな繁華街だったはずだ。大きな繁華街ではあるが、実はそのほとんどは平屋や二階建てがせいぜいの簡素な作りで、ほぼバラックと言っていいものまである。この区画が大きな寺に隣り合っていることを考えると、ここはもともと境内地で空襲後に焼け跡闇市としてスタートしたのではないかという想像ができる。境内地などの場合は追い出しがためらわれるのか、現在に至るまで闇市の名残があるところはいくつかある。そんな歴史を感じつつくまなく歩いていると、当然のようにヤクザの事務所もある。朝から元気だな。店は多くはスナックの類で、居酒屋のような“1軒目の店”の割合は少ない。この“スナック”がスナックとしてだけ営業していたのか、それとも奥座敷のある類なのかは何とも言えないのだが、そうであっても不思議はないだろう。夏の日差しの下、死んだような繁華街はいいものだった。
これだけでかなりの時間を楽しめて、お昼も食べてから列車に乗るには時間的に腹具合的にタイミングが悪いのでもう一度おにぎりを。今度はたらこときのこ。昆布の炊いたのとおはぎと柏餅も買った。ずんだ餅を買いたかったが生憎品切れになった後だった。残念。
安積国造神社の参道脇も同じように飲食店が軒を重ねるようにして立ち並んでおり、これも同様の成り立ちか。ここでも壊れそうな古い建物、古い営業形態が目を惹く。
駅に向かうメインストリートには柏屋という老舗の和菓子屋があった。真新しい店だが暖簾は嘉永。妻は和菓子のお土産は好まないからと思ったが、目についたのは厚皮あんドーナツの文字。しかも目の前で揚げてくれるようだ。水戸であんドーナツを買う予定だがこれは食べておきたい。というわけでお店に入り1つ注文。いろりを囲むように設えたイートインコーナーで待つこと数分、出てきました。この店が素晴らしいのはイートインコーナーが安っぽくないばかりかお茶のサービスまであり、しかもたった1個をわざわざ持ってきてくれること。普通ここまでしてくれないですよ。でまたそのあんドーナツが美味い。ふわっとした生地にあんこが熱々。砂糖は控えめでそれがまたよろしい。たったの150円でこれなら大満足でしょ。
もう少し時間はあるが駅ビルでもぶらつくかなあ、と思ったところ、駅の反対側にショッピングセンターがあるという地図を見かけ、足を伸ばしたかったがそこまでの余裕はなく断念。
駅前のATiというビル前ではせせらぎ小町というご当地アイドルかなにかがイベントのリハーサルをしていた。最近は誰でもアイドルになれる時代だな。ウォーホルもびっくりだ。
臨時列車で常陸大子へ。満席だが辛うじて座れた。車窓風景は粋とは違って明るく輝いている。夕暮れの美しさはないが、これはこれでいいだろう。
常陸大子で乗り換え。急いで移動したのでなんとか席は確保。ほんとローカル線って混むわ。
そろそろおにぎりと惣菜を食べる。食べているとなぜか検札が回ってきた。テーブルもないのに苦心して食べている最中だったので後にしてくれと言ったら結局回ってこなかった。暇つぶしなら迷惑だからやめてくれ。なおお惣菜の昆布は塩気が強すぎた。さすが東北。
上菅谷で乗り換える寸前で雨が降り出す。ほんと予報はアテにならんな。どうしようか迷ったが、強い雨ではないし止むことを願って常陸太田行きに乗り換える。こちらは空いていてゆったり。
常陸太田の駅は真新しい。観光案内所まであってやる気満々だ。そんな駅前は住宅地が広がり、のんびりした空気は旅感満点。雨もまだ降っているのでベンチでのんびりしていると、このままのんびりして帰るのも悪くないんじゃないかという気分になる。まあ歩くんですけど。
この常陸太田は旧市街が鯨岡という台地に形成されているという変わった街並み。台地なので割と見晴らしがよく開放感がある。なんとも独特の雰囲気だ。
ベンチでのんびりしていたから時間がなくゆっくり味わえなかったのは残念だが、来た甲斐はあった。ここもいいところだった。
帰りは水郡線の支線常陸太田から水戸までの電車なので比較的空いていた。
水戸到着。まず観光案内所のお姉さん推薦の水戸屋食堂へ。17時という時間のせいか静まり返っている。108円のあんドーナツを3つ買ったが、これホントに大丈夫なのかという気になった。
あとは裏街を歩き回り、最後に水戸芸術館へ。入念に図録を漁り、半額のチェ・スーメイと500円のを5冊。さらにCD1枚、ポスター5本。買いすぎやろ。大丈夫ですかと言われたが大丈夫なはずがなくフラフラしながら駅まで。なんとか予定の電車に乗り込み、ホームで買った缶コーヒーであんドーナツを食べるが、うーん。これリピーター多いのか。なんとも。
日暮里到着。そして自宅へ。
少し小腹も空いているので半額で買ったチャーハンセットを食べ、妻にはおはぎ自分には柏餅。どちらも美味かった。おにぎり屋の余技ではなく普通に和菓子屋のレベル。80円でこれならそりゃ買うわ。たけや恐るべし。
疲れて寝る。
今回も実り多き青春18きっぷの旅だった。郡山も常陸大子常陸太田も二度と行くことはないしあの人々も二度と会うことはないんだろう。残念だが、それが人生だ。
ちなみに安積国造神社横にあった喫茶モナミはお休みだったから仕方ないとして、ミラノは純喫茶だった模様。勇気を出すべきだったか。