怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

東北へ行ってみる2

目覚ましをセットしたつもりができてなかった。エアコンのせいで乾燥してるが、柔らかなベッドでぐっすり眠れた。自宅は一人では寒いし、西成の宿は貧相だ。こんな居心地の良いベッドは久しぶりでのびのびできた。高級どころか安価なホテルで満足できる安上がりな自分がうれしい。
シャワーを浴びて朝食へ。今日は日曜なので7時頃はまだ寝ているのか、それとももうとっくに起きているのか、客の影はまばら。皆さんこちらに工事のために来ている人ばかりだ。なので、結構な食欲のようだが僕だって負けてない。バイキング形式なのでバラエティもあり、豪華ではないが十分満足できる朝食。魚や野菜や卵、いろいろ食べた。ジャズが流れる中でコーヒーだって飲める。ごちそうさまです。
というわけでチェックアウト。小さいが一応荷物を預けて出かけた。Jビレッジをのぞいてみると、こちらも巨大な宿舎として機能しているようで、車のナンバーは福島周辺が多いが関東あたりのも見える。休日は車で気晴らしに出るのだろうが、気晴らしったって近場にはパチンコ屋くらいしかないわけで、まあいろいろ大変だろうと思う。
車もほとんど通らない道を浜に降りて行き、海の様子を見ていると、堤防が崩れている箇所もあれば、黒いビニール袋が整然と積まれているところもある。除染だ。最初にその光景を見たときは衝撃を受けたが、黒い袋は延々と続く。どこまでいっても除染。慣れてくる。草は刈られ、表土は削られ、黒いビニールに入る。これでようやく住めるのだろう。だがビニールはどうなるのだ。中身はどうなるのだ。何の気なしに出かけてきた僕だが、思うことは多い。津波を受けた家々もある。なかにはピアノが吹き飛ばされて鴨居に引っかかっているものなどもある。強烈な光景だ。床には雑多な生活用品が散らばり、悲惨な状態になっている。自分の家がこうなって、どんな気力がわくというのだろうか。言葉のない光景。倒れた樹木。遠くで鳴く犬。鳥の声。人はいない。無人の荒れた地。
もしかしたらもう立ち入り禁止区域かと思ってしまったが、そんなことはなかったようで、車や人の姿はぽつぽつ見かけた。浜から遠くなるともうここで暮らしている人も多いようだ。だがお店などは元々だろうが多くないし、鉄道も広野で止まったままだから駅前もしんとしている。駅のトイレは原発マネーで作られたもののようで、そうした情景を見ると、原発で村おこしする気持ちはよくわかる。事故さえなければ、それが正しい選択だったかもしれない。
延々と歩いたのだが、立ち入り禁止ラインは程遠い。帰りの都合もあるので、おそらくラインの少し手前で断念してUターンした。残念ではあるが、歩きまわってみることが目的なので、これはこれでしかたない。
帰途はもう感覚が麻痺しているせいもあってか、そう得るものはない。寒いので足早にホテルに戻る。朝食をたくさん食べたおかげで空腹に悩まされなかったのはありがたかった。
荷物を受け取り、駅へ。海岸側を通ってみると、ここも黒いビニール袋や瓦礫が山と積まれている。と同時に、作業員目当てと思しき真新しいアパートも建っている。ここは海には近いが高低差があるようで、被害はごく限られている。限られているが、それでも結構な荒野が見えたりもする。そしてここでも難を逃れた神社がある。
駅周りでパンでも買いたかったが、店がないのでそのまま乗り込み、いわきへ向う。いい体験ができた。6時間ほとんど歩きっぱなし。がんばった。
いわきで乗り換えの短い時間でパンと缶コーヒーを買い、電車内でお手軽な昼食。
やがて水戸へ。ここで乗り換え時間があるので、寒い中駅周辺に行ってみると、水戸光圀神社というのをみつけた。小さな神社だが、趣もあってなかなかいい。夕方のいい時間帯でもあるのでこれくらいで十分だ。
電車で日暮里へ。日常に戻る。
スーパーで弁当を買って食べる。疲れた。