怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

藤武文「プリズン・トリック」読了。刑務所内の描写などは迫力があるものの、登場人物が多すぎ、しかもその背景を余分なところまで書きこんでいるために散漫になっている。同じ分量でも、ふくらませるところをふくらませて余分なところを削ればもう少し違ったのではないか。謝罪のシーンはそれでも書かなければいけないという気迫のようなものもあったが、それにしたって別の作品にすればよいこと。真犯人の伏線も露骨だし、これで乱歩賞はやりすぎだろう。この作者が大成するとは考えられない。
最近カセットテープの整理をしているので、しばらく聴いてない、たぶん10年以上聴いてないものを聴きなおしてる。なかで中島みゆきが10本くらいあり、全部レコードで持ってるやつだから捨てようと思って聴き返した。当時ニューミュージックと言われていたけれど、今聞くとかなりフォークの雰囲気を残していて喫茶ロックの香りがする。ゆるーくって、当時坂本龍一が酷評してた記憶があるが、今になるとまあ文句言いたい気持ちもわかる。で、歌詞は素晴らしい。当時はイマイチピンとこなかった歌詞が今になると沁みるようになってたりするし、当時の中島みゆきの年齢になったせいもあるのかもしれない。
「あたいの夏休み」
お金貯めて3日もらうのが夏休み/週刊誌読んでやってくれば数珠つなぎ/冷めたスープ放り投げるように飲まされて/二段ベッドでもあたいの夏休み
貴賓室の文字は金文字のVIP/のぞきこんでつまみだされてる夏休み/あたいだって街じゃ捨てたもんじゃないのよと/慣れた酒を飲んで酔う十把一絡げ
もう、すごいとしか言いようがない。「放り投げるように飲まされて」とか、「慣れた酒を飲んで酔う十把一絡げ」とか、よく出てくるなこの言葉。豊川座敷も天才だと思うが、中島みゆきは天才を超えてる。発声法を変えて以降の声になじめなくてファンを離れてしまったけど、昔の作品は何十年たっても輝き続けている。