怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

ひとつのかたち

小林紀晴「最後の夏 1991」読了。
著者が1991年に撮影したモノクロのスナップ写真に短文を添えたもの。
1991年といえば平成3年、バブル経済が頂点に達していたころであるはずなのに、そこに写る人も風景も、昭和、いや戦後の匂いがしてくるのはなぜだろうか。モノクロだからというだけではなく、何か著者の情念が昭和だったからだと思うしかない。
著者と私は同年代にあたる。あのころ、将来や過去や現在を絶望と憂鬱と希望と眩暈を持って眺め、大きな波に抗おうにも流されたあのころが胸の奥のほうにあるいれもののずれた蓋の隙間からじわりとにじみ出て喉のあたりに立ち込めるのだ。