怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

牧野貴映画祭@アップリンク

午前中、辛ラーメンをまたやってないかと思って出かけようとしたら架線にビニールが絡まったとのことで30分遅れる。東京は風の強い日がずいぶん多いのでこういうこともあるのだろうが、もっと早く取れないものだろうか。
手ぶらで帰宅。用事があるはずだった妻が勘違いしていたそうで、一緒に昼食を食べることになった。
午後ぜんざいを食べて渋谷へ。
まずヒカリエで岡本太郎展。リトグラフと岡本デザインの家具などがあり、まあ悪いものではないのだけど、サインを買うといったところか。
残響ショップに立ち寄るとどうやらイベント直後らしくごったがえしているので引き返す。この相性の悪さはなんなんだろう。
NADiffにでもと思ったら途中でLOGOSを見かけたので入ってみる。ここも美術書の品揃えはよく、志賀理江子の「螺旋海岸」を手に取る。プリントに見劣りしないものだったので買いたいとは思うのだが価格がネック。どうしたものか。なんにせよ今日買うのはうまくないのでとりあえず保留し、時計を見るともういい時間なのでUPLINKへ。
今日は「Makino Takashi Film Festival 2013」という牧野貴さんの映画祭。その2日目で、プログラム1では「Humming Fields」「still in cosmos」「2012[3D]」の3作品。まずはあのColleenさんが久しぶりのアルバムを出すというのがうれしいだけでなく、そのMVを牧野さんというのが二重にうれしい。このMVいつもの牧野さんとは少しイメージが違っていたのだが、これはネット配信を考慮したものだと後のトークで聞いて納得。音楽はColleenさんのボーカルが乗っていて意外だった。アルバムで一番MVにしやすい曲だからと提案されたということだったけれど、僕としてはもっとColleenさんらしさのある曲、アルバムコンセプトを表現している曲といった観点で選んでほしかったという思いもある。
「2012[3D]」は以前見た時は2Dだったし昨秋の3D上映のときは日本にいなかったりで待望の3D。これが素晴らしかった。僕は3D映画にはまるで興味がなく、というのも人間は毎日16時間くらい3Dを見ているから。恵比寿映像祭で見た3Dも全く無意味だと思った。しかしこれは違った。単純に映像が飛び出してくるのではない。映像が波打ちうねり、たしかに立体に見えるのだけど立体のための立体ではない、独特の映像体験として成立している。人間が24時間生活していて全く見ることのできない映像。時々3Dメガネを外して確認したが、2Dとは見え方がまるで違う。2つの映画祭で受賞したと聞いてどれほどのものかと思っていたが、これを超える作品はたしかになかったろうと思う。
その後ジュリアン・ロスさん、土居伸彰さんと牧野さんとで鼎談となったがこれがまた興味深い内容。牧野さんは日大映画学科の出身だが、在学中から将来支えになるのは技術だから技術だけを学ぼう、それ以外は教授の言うことは聞かないと決めていたと言う。天才にしか許されない発言であるが、松本俊夫を知らない教授はそう言われても仕方ない。そして卒業制作の企画が却下されて同級生が撮っていたカンフー映画を見て軽々とそれを超えるものを作り、同時に自分の撮ろうとしてたものを撮り勝手に続けて上映したとか。面白い。
CDを10枚くらい買ったら全部ジム・オルークが関わっていたとか興味深い話はほかにもあるのだが、僕がほうと思ったのは夢は映像ではないという一節。僕も捉え方は少し違うが実は同じように思っていたからだ。夢は自分の目で見た映像のようでもあり、自分が登場する映画をみているようでもある。両方が混ざっているというのではなく、その両方なのだ。「ドアを開けて家に入る」という夢の場合、木のドアが開き暗い家に踏み込んでいく主観と、その動作をしている自分が同時に感じられる。これは、「ドアを開けて家に入る」という概念を夢見ているからだ。概念だから視点はもちろん多角的で、だから「背中の刺青を○○に見られていて刺青の柄も○○の顔も同時にはっきり認識する」という夢も成り立つ。概念だから、自分の持たない概念は夢見ることができない。・・・だからなんなんだという話だけど。
あまり間をおかずにプログラム2。今度は「Humming Fields」「Generator」「Space Noise」で、「Space Noise」は水面のゆらぎにノイズを重ねたような映像。16mmとプロジェクターを同時に投影したものらしい。色彩がビビッドでノイズが弾んでいるように見えるのも特徴で、面白かったのがスモークを焚き光線を出しているところ。前から思っていたけど、牧野さんの作品は映画という枠を壊し、エクスパンデッドシネマという概念すら超えているのではないだろうか。
終演後、厚かましく牧野さんとお話させてもらい、当然のごとくColleenさんの話に。MVの話を得意げにする牧野さんが楽しい。ただ、今度のレーベルが来日公演へのサポートに消極的らしく、それがちょっと。牧野さんは来日公演のたびに運悪く一度も見れてないそうだから、今度こそと思うのだが。僕も協力できることがあればいいのだが、どうしたものか。
楽しく帰宅。妻がオオゼキで半額弁当を確保してくれていたのでありがたく戴く。