怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

荷風散人

妻は姪と合流するために出かけ、僕はご飯を炊いていなばのチキンとタイカレーグリーン。缶詰は直火で温めていい感じなのだが、鍋で炊いたご飯は水気が多すぎる。ベトナム米の時も感じたことだが、どうもこの鍋は米を炊くには向かないのでは。しかも研ぐ時に間違えて2合も研いでしまった。明日使おう。
食べ終わって三鷹と迷ったが雑司ヶ谷霊園へ。地下鉄を乗り間違えなどしながら雑司ヶ谷へ。東京の地下鉄は急行なんかが平気で走ってるからいけない。
霊園に入りまずは地図探し。その後地図を頼りに歩く。予定外だが初代猫八や東条英機の墓もあったので見学。東条英機の墓は名刺受けが脇に備えられている。死を弔うのではない俗世そのものの墓をみっともないとは思わないのだろうか。
永井荷風の墓は背の低い生垣に囲まれていて見過ごしそうになる。記憶では荷風は遊女にゆかりの深い浄閑寺に葬られることを望んでいたが、諸事情があってここに眠っているはずだ。両隣には父君と永井家の墓石もあり、場所はもちろんこうした葬られ方も荷風の意にはそぐわないように感じる。ただ、墓は墓だ。粗末ではないが小さな墓石。墓石にかかった落ち葉を少し払って膝をつき、手を合わせる。念仏は無用だろう。作品のことを少し考えて、心を空にし、無の時間を得る。墓参終了。
一つ荷物を片づけたが、どうも浄閑寺にも行かないと具合が悪いような気になり、やはり片づいてはいないようだ。それに雑司ヶ谷霊園だって今日でおしまいにしていいのかどうか。なにしろ2月というのに4月並の陽気で墓参の雰囲気が出ないのだ。
そのまま泉鏡花の墓へ。こちらは聳えるような丈の高い墓石で、背後の高層マンションと競っているようだ。予想に反するが、これはこれで鏡花らしい。同じく墓参。
小泉八雲の墓は傍らに夫人の墓を従えている。墓参。
竹久夢二の墓は小さな長円形で「竹久夢二を埋む」と彫られている。よい墓だ。墓参。
最後に夏目漱石の墓へ。これはなんとも威風堂々としたもので、良く言えば文豪らしい、悪く言えば虚仮威しのような代物。興ざめしつつも手を合わせる。墓所の隅に夏目家の墓石もあり、房之介氏が建てたものだそうだ。
谷といいつつ実は丘の上にある雑司ヶ谷霊園を出て坂を下る。古い家並みが多く、歩きごたえのある風情。途中に「かすみ荘」という古いアパートがあり、制服姿の高校生らにカメラを向けている人たちがいたが、写真家だろうか。正直なところ僕もかすみ荘を撮りたかったので残念だった。
さらに「和敬塾」という立派な施設を発見。場所からしてピンと来たので調べたら、やはり村上春樹早稲田大学時代に寄宿していた学生寮だった。短編「蛍」やノルウェイの森の舞台になった場所である。となると本を片手にじっくり探検したいところだがそうもいかないので退散し坂を下る。
YUKA TSURUNOギャラリーへ。流麻二果「可視線」展。風景をモチーフに鮮やかな色遣いで・・・うーん、いいといえばいいのだけど、きれいな絵で終ってしまっているような印象。インテリアにはなりやすいのかもしれないのだが、絵としての力が伝わってこない。ギャラリーの壁が白だったらもう少しいいのでは。作家さんが在廊していたようだけど、ギャラリーの人らと3人でお話しされていて、僕も気軽に見ていられてありがたいのだけど、他の作品や資料をのぞけなかったのは残念だったかな。
だらだらと早稲田大学の脇を通る。古本屋は1軒しか見当たらず、時代なのか早稲田が悪いのか脇道にたくさんあるのか。どうなんだろうね。
新宿に着き、ついでにゴールデン街見学などをしてから駅前で妻に連絡。運悪く第一候補が満席ですったもんだしたけど時間をずらすことで解決。それにしても妻の飲み込みの悪さといったら。
帰宅してのんびり。
時間になり下高井戸へ。ビストロ ル・プチ・リュタン。小さなレストランで、接客も実にアットホーム。堅苦しくないが丁寧で居心地がよい。アミューズは玉ねぎの薄焼きピザ、スープは蕪。前菜は自家製生ハムと、イベリコ豚のサラミ&チョリソー、塩ダラとじゃがいものブランダード仕立て、エスカルゴのブルゴーニュ風オーブン焼きを選択。メインは牛ヒレ肉のステーキマスタードソース、牛ホホ肉の赤ワイン煮込み、エゾ鹿モモ肉のステーキを。だいたいどれもおいしかったが、エスカルゴは熱すぎでソースもいまひとつだったかな。デザートは皆さん好評。まあまあかな。ワインはコート・デュ・ローヌで、スイスで飲んだことを思いだしつつ。久しぶりに贅沢な食事ができた気分。同じ値段でも焼肉ではこうならない。
帰宅しすぐに就寝。妻と姪はしばらく話し込んでいたようだ。