怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

塩田千春「私たちの行方」展@猪熊弦一郎美術館

kikotsu2012-03-18

nattuを出ると1時前だけあってさすがに歓楽街の客引きも減り気味だが、事前に調べておいた公衆電話に行き、プラネットに電話。フラット席空いてるそうなのでそのまま向かう。僕の前に一人、後から数人仮眠目的の客が続々で、少し遅かったらアウトだったかも。なにしろ中心部にはネットカフェはここしかないからね。
席は普通にフラットシートで、密室度は高め。薄っぺらい毛布とクッションはあるので一応眠れる感じ。ただ、耳栓を忘れてきたのでそこだけが、ちょっと。その割には眠れたが、耳栓があれば7時過ぎに起きることはなかったと思う。シャワーが300円なので利用せずお絞りで要所を拭いて対応。まあ直島銭湯で洗ってるし。不満といえば、ファッション誌の品揃えが手薄なことかな。マンガは読まないし。
朝ごはんをどこかでと思ったが主要なうどんやは日曜朝は休み、雨の中バカ一代まで歩くのはしんどいのでそのまま駅へ。
坂出に到着。駅前で市をやっており、鯛飯を朝食代わりにしようかと思ったが日の出製麺所に行くまで我慢することに。しかし何も買わないのは寂しいので、さかいで金時丸というスイートポテトを食べる。250円で揚げたてほくほくでよかった。
坂出人口土地へ。建築物としての奇抜さも見どころだが、それ以上に市営住宅としての好き勝手な使われ方に味があり、以前軍艦アパートを探訪したときの感慨に似ている。あそこにも祠が祭られていた。住民の皆さんには部外者の立ち入りは迷惑だったと思うが、申し訳ないけど自分の気持ちを抑えられない。
カマダの出汁醤油の本社へ行き、工場前の直売所で低塩だし醤油を210円で。元々老舗の醤油屋だったようだが、裏手を買収してすごい工場になってるのは行かないとわからないね。あと、なぜか四谷シモンの人形館をやってるのはなにか所以でもあるのだろうか。
歩いて日の出製麺所へ。開店10分前だが長蛇の列で、前回よりちょっとだけマシか。ていうか、これもう開店してないか。
正直風邪でかなりしんどいが、今更ってことでじっと待つ。前と同じあたりに座り、前回の教訓から冷に。そして大に。いやはや、さすがに最高峰のおいしさ。今回5軒まわたが、抜群においしかった。何がうまいかわかってたせいもあるが、見た目からして別格だし。200円。疲れたが、まあいいか。
坂出駅前の市は終わり間際。おばあちゃんの出店がずいぶん売れ残ってる。こういう場では普通の焼きそばやなんかは、あまり売れないよ、味じゃなくてちょっと変わったものを出さないと、と言ってあげたいが。
そして丸亀へ。
猪熊弦一郎美術館でチケットを買い荷物を預け、3階の展示室に入ったとたん水の匂いが立ち込めている。目の前にある「私たちの行方」と題されたインスタレーション、本展のタイトル作でもある。二艘の朽ちかけた小舟とそこに降りしきる雨。光を浴びた姿は幻想的だ。もちろんその光景が幻想的だということでもあるが、幻想を呼びこんでくるという意味でもある。どこか現実感のない光景と、その光景が運んでくるもうひとつの姿。その二重映しがこのインスタレーションの素晴らしさだ。
結局猪熊弦一郎美術館で展示場に居たのは3時間ほど、うち2時間半は3階のC展示室で行われた塩田千春「私たちの行方」展を見て、もっと言えば1時間半以上はこの「私たちの行方」を見ていたと思う。今までの塩田千春作品とは違ったスタイルを持ち、しかし塩田作品のモチーフは継承したこの作品、自信作だと思う。
僕はこの作品を眺めていて、気がついたことがいくつかある。会場には水槽がしつらえられていながら、舟は空中に固定されている。雨は間歇式に舳先と艫に降り注ぐ。舳先と艫に注がれるのは単純に舟の強度との兼ね合いだろう。空中への固定は、安全面もあるが観賞者の視線との兼ね合い、舟に注がれた水がそこからさらに下に落ちる音と視覚効果を考えてのことだろう。塩田さんはその後の講演で、「舟は前に進む、だからそこに私たちの行方を重ねて」というようなことを言っていた。だが僕は固定された舟から「前へ進む」というイメージは受けなかった。むしろ本来進むべき舟が固定されている、つまり後ろから引かれ止められているようなイメージを受ける。実はこの「後ろから」は靴のインスタレーションでも後ろから赤い紐でつながれているのと同じで、塩田さんの意識にはないのかもしれないが、塩田作品の一つの要素なのではないかと思う。
ほかにはドローイングが10点、インスタレーション1点(これはいまひとつ)、造形作品2点、ビデオ作品1セット(7点)。ビデオ作品「この世にはどうやって来たの?」には関西弁で綾瀬はるかそっくりのかわいらしい女の子が出ていた。
ほかにエントランスにインスタレーションとビデオ作品が各1点。金沢21世紀美術館で見たのと同じものだが、展示環境はこちらのほうがいい。
これで全部。正直、3階を見終わって2階に行ったらAもBも猪熊弦一郎でびっくりした。えっ、これだけ?
講演で、4年前にオファーがあり「私たちの行方」の構想は2年前と話していたから時間がなかったわけではないと思うのだが、ちょっと物足りない。物販も図録は制作中で5月下旬(これは仕方ない)、ポスター販売なし。うーん。サイン本はあるだろうと思ったらあったので買いました。杉本博司と違ってプレミアもついてないし。
それから塩田千春さんの講演。1時間ほどでしたが、過去の作品制作の背景などが中心で、話し慣れないので緊張されており、途中からうつらうつらしてしまったのが正直なところ。有意義といえば有意義でしたが、もともと作家の意図に関わりなく自分なりの見方をするタイプなので。
5時ごろまで居て、寺岡商店に餃子を食べに行ってみたが体調が限界でビールは間違いなく飲めないのでUターンし、結局将八うどんで釜あげ大350円。おいしかったし量が多くて苦しかった。
最後に少しだけ時間があるのでもう一度塩田千春展を見て、丸亀駅へ。
高松駅に着き、急いでおみやげの灸まん。券が使えるのがありがたい。満腹なのでそれ以上は買わず、バス乗り場へ行きターミナルへ。今日は行きと違ってがらがらで、のびのびできた。2時間ほどで電話で起こされたのは残念だったが。
西宮北口まで迎えに来てもらい、なんとか帰宅。実りある2日間だったが体はへとへと。