怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

豊島の旅

浅いながらもなんとか4時間近く眠れたようだ。5時到着の予定だがだいぶ遅れて送迎バスでJR高松駅近くへ。フェリーターミナルが開いているかどうかわからないのでJRの待合へ。ここがソファタイプの椅子で居心地良く、似たような人たちが目を閉じて座ってた。眠れるわけではないが、そうしているだけでだいぶマシだから。ほどほどの時間に始動してサンクスで朝食用のおにぎりを買いターミナルへ。待合で食べて高速船を待つ。高速船は停泊している時点で相当な横揺れで、出航したらしたでこんどはモーターの振動がすごい。気分悪くて36分だっけ、苦痛でした。風景だけが救い。
着いた家浦の港は見事に何もなくてどこに行ったらいいのかすらわからないが、持ち前の方向感覚でターミナル兼観光協会に一直線でたどり着く。ここでまたレンタサイクルがオープンするまで休憩。9時前におじさんが来て、同じ船だった(と思う)女の子ら7人が大挙して借りて行ったあとで僕も。この電動自転車、電動でないときはかなり重いのを知っていたのでかえって疲れないかと思っていたが全然でした。平地はすいすいだし、少しくらいの坂なら電動の力でほぼ大丈夫。それでも苦しかったところはいくつかあったけれど、休憩したりジグザグに走ったりするほどのこともなく、非常に快適。もちろん下り坂は壮快だし。20度前後という今頃の気候も良かったのは確か(真夏や真冬はさすがに厳しい)だけれど、その気候の良さを最大限味わえたと思う。よかった。
点在しているスポットのうち「100歳の手」だけは時間切れで行けなかったが、元々よほど時間が余らなければ行かないつもりだったのでよし。なかで一番素晴らしかったのがやはり塩田千春の遠い記憶。作品の意味合いとしては古い建具の持つ歴史がということになるが、そういう瑣末なことはどうでもよくなるくらいにトンネルのパワーがものすごい。あの感覚はなんと表現したらいいのだろう。誘い込まれるように入り抜けると目の前に稲穂。時期もよかった。これが寒々とした時期で稲株だったらまた別だろう。これは本当に傑作だと思った。これをかなりの時間一人で堪能できたのもラッキーだったし。
もう一つよかったのが豊島美術館。行く前はなんだそれという気持ちだったが、行ってみるとこれがまた。ひんやりした床と穴から見える空、緑、虫や鳥の声のバランスが最高。真冬だったらとてもじゃないけど居られないと思うが、本当によかったです。僕もかなり長い時間寝そべっていた。人はそれなりに居たけれどだいたい静かだったし。体感してみないとわからないものだなあ。
それから良かったのがもう一つ、心臓音のアーカイブの駐輪場そばで拾った流木。心臓音のアーカイブのところの浜で流木をいくつか拾い、駐輪場の近くなんて拾われつくしてるだろうなと思いつつも入っていったらすぐ目の前に素晴らしいのが。奇跡だ。裸で自転車のかごに入れて手で持ち歩いたら何人かに声をかけられた。
まずまずだったのが、心臓音のアーカイブ。正直なところ、心臓の音を聞いて光が明滅して・・・だけで500円はちょっと。そこまでの体験ではないです。とはいえ、浜辺に黒い建物が突如出現し外からでもドクドクいってるのが聞こえるのは相当な異次元空間で、そこを評価したい。ある意味、入らずに外でぼーっとしてるのが一番かも。自分の心臓音も登録できるが、うーん、自分の音は聞きたくないし聞かせたくない。それと過去の登録者の音を個別に聞けるようにもなっていて、もちろん福武さんを検索したら6番でした。
もう一つのまずまずが、ピピロッティ・リストの「あなたの最初の色」金沢21世紀美術館の作品(盗まれた!)よりはややおとなしくその分幻想的。とても見にくいところまで含めての作品なのはわかるけど、映像を十分楽しめるところまでは至らず。個人的には島キッチンの待ち時間で見たので、順番が気になって堪能できなかった面もあるかもしれない。
それほどでも、だったのが「ストーム・ハウス」。悪くないけど、実際にそういう経験がある人にとってはそう新鮮なものではない。ほんとにそこまでの家に住んでいたわけではないけれど、でも多分今の若者が感じる感覚とは全然違うんだろうと思う。畳の傷み具合なんかがリアルでした。「イル ヴェント」は、これも悪くないけれど、変わったカフェと言われればそれまでなので。オリーブ茶はおいしかったです。
別に、だったのは「トムナフーリ」「島キッチン」「空の粒子」ですかね。トムナフーリは全然光らないし、島キッチンもさんざん待たされた割には普通の飲食店だし。僕なんて一人だからカウンターにいつでも通せるだろうに、前の9人が待ってるから延々待たされて。ああいうやり方は嫌だなあ。キーマカレーセット1200円かあ。次来たらほかで食べますよ。「空の粒子」は、もう普通の野外彫刻とそう変わらずで。
なので次来るなら、遠い記憶と豊島美術館ピピロッティ・リストをじっくり観賞、心臓音は外でまったり、「100歳の手」は今度こそ行ってみるか、くらいですね。あと、見忘れていた「フラワー/ハッピースネーク」も。そんなの知らなかった。
絶景だし、大ソテツとか湧水とかもあるし、棚田もあるし。見残しが出てもいいからじっくり鑑賞しようと思って実際そうしたつもりだけど、なかなか思うようにはいかないな。そういう性分だから。
一応時間ぎりぎりくらいに自転車を返却。すぐに港へ。なんたることか途中でチケットを落としてしまいうろたえるも、後ろから来た女性が拾ってくれてた。ありがとう。あれがないともう一度買うだけならまだしも、乗れなくなってたかもしれない。助かった。
楽しい豊島を後にして直島へ。豊島からくるとすごい違和感がある。もうすっかり観光地で。たとえて言えば湯布院が昔はのんびりした温泉だったのに今や騒がしいレジャーランドになったのと同じ感じ。豊島はよかったなあ。ていうか、こういうとこはカップルか一人か家族くらいで来るもので、友達グループとか団体とかは帰ってほしいのよね。ぶつくさ。
まずはドミトリー九龍へ。おっさんに入口を教えてもらう。誰もいないので勝手に流木だけ置かせてもらい、港で赤南瓜を見ていたらバスの時間。数分後シャトルバスに接続と思いのんびりして戻ってきたら、シャトルバスはもう出た後とか。時刻が変わったのか?青ざめて地中美術館チケットセンターへ向かう。地図の時間からすると間に合わないが、そこは早足で。李禹煥美術館を過ぎたところでなんとかなる目処がついてほっとした。汗かいて到着。
ぞろぞろと地中美術館に向かう。とにかく暗い。というのは、自然光を多用していてそもそも照明の用意が少ないためのようだ。人気のない暗い建物を歩いて行くのは結構面白い。そしてジェームズ・タレルのナイトプログラム。最初は普通。天井の大きな穴から暮れてゆく空を見てるだけ。しかしずいぶん時間がたったころ(つまり首が痛くてたまらなくなったころ)、変化が起き始める。穴が黒くなり明るくなり、遠近の感覚が薄れてゆく。金沢21のカプーアにも似ている。なかなか面白い体験だった。最後の1枠に滑り込めてよかった。
終わってチケットセンターで解散というから馬鹿正直についていったわけですが、そこで何があるわけでもなくただ先導されただけ。僕の行く先は反対側なんですが。現地解散でいいのに。ぶつくさ言いながら宮浦方面へ歩く。歩きは僕だけのようだ。それか、はしっこくてとっとと向かったか。乗合バスもあったようだが、自分で手配しろって面倒だし、それに夜道を歩くのは結構好きだし。なんとなく余韻を楽しむには歩くことなんだよね。行きの歩きは無駄だったけど。バスなんかに乗ったら楽しくない。豊島の自転車一周も意外に疲れなかったしね。寝不足と疲労でヘトヘトの予想だったのが思いのほか楽しめた。
40分くらいのはずがここも早めに到着。ふじ食堂で日替わり定食。正直、これならコンビニとかで弁当買って夜の海でも見ながら食べたほうがマシですよ。レトルトのサンマかば焼きはこないだ食べたばかりだし、おでんもしょうもないし、味噌汁さえレトルト。700円はありがたいけど、ねえ。
九龍でチェックイン。部屋に通されたら早速床で爆睡しているバイク乗りがいて苦笑。
そしてラウンジで携帯の充電をして(部屋のは爆睡男に占領されていた)直島銭湯へ。混んでいたら翌日にするか、と思っていたけれどそうでもなく、だいたい常時4人くらいの感じ。8時過ぎという時間帯がよかったのかな。独り占めできたら写真撮りまくれたのにな。とか期待してはいけない。これでも十分ありがたいです。湯温がぬるめなのでわりと長湯できていい。一番気に行ったのはカランですね。カッコよかった。全体的にもレトロエロスの世界を独自に昇華した雰囲気がよかった。奥のサボテンが怪しかったなあ。最後にタオルを2枚とラムネを買いました。しかし何もかも券売機って、どうなん。
宿に戻る前に赤南瓜をもう一度堪能、人のいない海の駅も堪能。ついでに宿周辺を散歩。路地がたくさんでうれしい。真ん中に雨水溝がはしってるやつね。2mくらいのほんとの路地。久しぶりにうろうろした。観光客向けの騒がしい店はほとんどなく、民家と廃屋ばかり。誰そ彼時ならもっと楽しいのに暗くなりすぎなのが残念。次回はそこら辺注意だ。うろうろし過ぎて変な方向に行ってしまったのがわかり、あわてて戻る。なにしろ携帯がないから門限に間に合うかもわからないし。難儀ですな。
戻ってラウンジでたむろする10人近くを軽くスルーして携帯を回収、部屋に戻ると爆睡男は依然爆睡中。僕も歯を磨く。なんか宿泊者の韓国人女性とやらが日本人の友達?と戻ってきて遅い時間に鍵を開けてくれとか。知らんがな。親切な人が引き受けていてそれはいいけど、そんなにここで夜遊びしたいかね。僕なら朝楽しみたいけど。そういうのが僕と観光客の違いか。