怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

心の中の廃虚

福永武彦「廃市」を読みはじめる。ずいぶんと昔、大林宣彦が映画化したのだが大手の作品ではなかったのか上映場所が限られとうとう見のがしてしまったことを今でも憶えていた。主演は小林聡美であったと思う。
素晴らしい小説だ。追憶のフィルターを通して旧仮名遣いで綴られる若き夏の思い出。悔恨と羨望。モノクロ写真のような陰影に富んだ、色彩に欠ける風景はゆっくりとした時間と共にしみ込んできて小説の終わりを惜しませる。もちろん小説は終わるからこそ良いのだ。
大林宣彦がこの作品を映画化したのは至極当然であろう。ほかに適任者はいるだろうか。