怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

別の時間、別の空間

旧来住家住宅外観

仕事で西脇に。大変そうに言いながら、実はけっこう楽しみである。
加古川加古川線に乗り換える。案の定ワンマンだが1両しか無いので満席。2両に出来ない理由でもあるのか。
とことこと列車は走り、でもかつて山陰や山の中のローカル線で旅していた時と違い、車両は結構新しくこぎれいで、乗客も大阪と変わらぬ佇まいで、あまり旅愁はない。1時間ほどで西脇市駅に着く。どうやら谷川方面に向かいたいらしいおじさんが乗り継ぎは2時間後と聞かされて絶句している。まぁそんなもんです。旅愁はいいけど、気の向いた駅でうかつに降りられないのがローカル線の旅。
見事に何も無い駅前を通り過ぎ、歩いて目的地に向かう。天気が良く、上着を脱いで肩に担いで歩く。30分ほど歩くのだが、楽しいので全く苦痛じゃない。仕事を済ませ、まっすぐ帰るのもどうかと思い、東にぶらぶら進んでみると、「旧来住家住宅」という看板がある。行ってみると、どうやら古い民家を公開しているもののようだ。名簿に名前を書かされる。住所は町名まで、名前は義兄のを拝借。管理をしているらしいおばさんに案内してもらう。立派な木材を用いて見事な大工仕事。竹島からとったという木材などは到底お目にかかれない代物で、この山の中にこれほどのものがあるとは知らなかった。おばさんもこの家を誇りに思っている様子が伝わる。2階から柿の木に雀が遊ぶ様子が良く見える。そう言えばもう11月なのだ。観覧は無料とのことでありがたい。実は募金箱が少し見えたのだがタイミングを失ってしまった。
そして来た道を戻る。ここでは時間はゆっくりと流れる。ひっそりとしたお店がならび、人の気配はあまりしない。何かの事務所らしいところでも、喧噪もお金のやり取りもかけひきも感じられる事は無い。すべてはつつましくひそやかに流れてゆく。
西脇中央大劇という古く大きな映画館が今でも営業している。やっているのは「寝ずの番」というのと、もう一つは成人映画だ。今やお客さんで賑わっている様子を想像できない姿は、しかし過去には娯楽を求めて列をなし外からちらりと見えている大きな階段を上り下りし場内で売り子のアイスクリームを買っていたお客さんの姿を想像することで、二重の像を描いてみせる。経営はもちろん苦しいのだろう。それでもこうして営業を続けるのは映画館主の誇りがなせるものか。以て瞑すべし。
このまま神戸まで戻ってから遅い昼食にしようかと迷ったが、せっかくなので道沿いにあるしゃれたカフェ兼雑貨屋に入った。かもめ食堂とか書いてあるのが目についたが、この店の名前なのかただ映画の題名を書いただけなのかわからない。日替わりランチ850円。パンも自慢らしく、自家製というパンがいくつか並べられ、ベーグルも作っているらしい。店内は神戸でもちょっとないくらいに洒落た雑貨が押し付けがましくない程度に置かれ、そのところどころに雑誌や子供向けの本や遊び道具なども違和感無く存在している。テーブルや椅子、食器類もセンス良くまとめられ、音楽も心地よい。列車の時間を忘れ、ここでのんびり過ごして行く事にする。そうすべきなのだ。もう一組のお客さんはお母さんと男の子であった。夜は多分若者が多いのだろうが、昼はこういう客層なのだろうか。その親子もじきに帰り、客は私だけになった。どう見ても商売の下手そうな(日替わりを注文する客には、内容を説明するのが当たり前だと思う)兄ちゃんと小太りの姉ちゃんが切り盛りしているようだが、いつまで持つのか、少し気になる。なんとか持ちこたえてもらいたいものだ。コーヒーも注文して1200円。
雑貨をのぞくのをうっかり忘れて帰途につく。帰りの列車は2両編成で空いている。1時間というのは長いように思えるがそうでもなく、すぐに加古川に着いた。多分時間の流れが違うのだ。
三宮でスニーカーを探す。高架下の小さな店でM?BUSというドイツのブランドのものを買う。ちょっとなかなか見ないもので、しかしヨーロッパの匂いのするものだ。9975円に替えの靴ひも400円。MATTHEWSという店だが、小さな小さな店でもこういうオリジナリティがあれば立派にやって行けるのだろう。
ひょうたんで餃子4人前。