怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

石田尚志「渦まく光」展と「光の絵巻」など

お昼を食べて原宿へ。BLUM & POEでリチャード・プリンス「New Portraits」展。ネット上で公開されているポートレートをコメント含めてキャンバスにプリントするという作品で、コメントが僕にはスラング過ぎてほとんどわからないのが難点だが、しかし興味深い。オリジナルとは、コピーとは、剽窃とは、そういった概念への根本からの問いかけはアートを崩壊させるような深遠さがあり、それがポップでイージーな体裁を取っているだけにどんよりとした重みさえ感じる。このシリーズには1000万円の値が付いたとかいう話もあるが、もちろんその価格はリチャード・プリンスのコンセプトに贈られた称賛の証であって、それは簡単に複製可能であることの裏返しだろう。同じものを誰だって作れるからこそこの作品の意味があるわけで。
受付に置かれていたファイルを熟読しておきたい。
横浜へ。
石田尚志「渦まく光」展。2度目になるので、今回は映像作品だけに絞って再見。名高い「フーガの技法」もさることながら、「燃える椅子」のスタイリッシュさが僕にはピンとくる。あのうねるような線の快楽には乏しいが、それだけが石田尚志の魅力ではないだろう。公開製作の記録映像などを見ていると、その舞踏に近いような動きに圧倒される。
コレクション展も満喫。もう1時間くらい早く来るべきだったかも。
館内があまりに寒かったのでナチュラルローソンでコーヒーを買い会場へ。外に牧野さんがいらっしゃったが知人と談笑中だったので挨拶だけ。よく考えるとずいぶん久しぶりだ。
イメージフォーラムフェスティバルLプログラム「光の光、闇の闇」は7作品でナビゲーターは石田尚志にトークゲストは牧野貴。といっても牧野さんも作品選定に関与しているようで、実質は二人による監修のようだ。
上映作品データは下記。
対角線交響楽 ヴィキング・エッゲリング/16ミリ/6分/1923〜25
習作7番(ハンガリアン・ダンス5番) オスカー・フィッシンガー/16ミリ/3分/1931
線と色の即興詩 ノーマン・マクラレン/16ミリ/6分/1955
フリーラディカルス レン・ライ/16ミリ/5分/1958
ラピス ジェイムズ・ホイットニー/16ミリ/10分/1966
スペース・モデュレーション バート・フェヒター/16ミリ/1分/1994
光の絵巻 石田尚志+牧野貴/デジタル/17分/2011
古典ともいえる作品から二人の共作までというラインナップだが、石田さん選定のものはやはり石田さんらしいし、牧野さん選定のものはやはりそれらしさがある。個性の違いがはっきりと反映されているのが面白い。
どれも必見の作品ぞろいだが、僕が特に好ましく思うのもやはり牧野さんサイドで、「スペース・モデュレーション」は短い時間にすべてを詰めたカッコ良さが素晴らしい。
そして最後の「光の絵巻」は何度見ても素晴らしい。横に流れてゆく映像は光り輝いてまさにタイトルそのまま。最初は無音だったが映画祭サイドの要望で音楽を作った(しかも1時間で)といった逸話や、使用機材についてのオフレコ話なども興味深かった。
会場となった横浜美術館レクチャーホールはクリアな音に美麗な映像を堪能できたのもうれしかった。たぶん今までで最も良い「絵巻」だった。
出口に葉山さんもいらっしゃっててこちらもご挨拶だけ。
7/7に牧野さん再編集による映画の上映会があるようで、再編集というのがどういったものなのかわからないが、牧野さんのことだから単なる編集のやり直しではないだろうし、大友さんの生演奏もあるなら行って損はないだろう。
帰りは気まぐれに桜木町からJRに乗ったのだが、乗ったところで地震が発生し、しかもJRだけ復旧が遅れに遅れ、僕の判断も遅れたおかげで帰宅は0時過ぎに。今後はJRの復旧を待つなんて馬鹿なことはやめようと誓った。