怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

牧野貴の新作「DEORBIT」

お昼にいなばのタイカレーを食べる。
その後ヤン・シュヴァンクマイエルの「オテサーネク」を見る。カメラワークといい描写といい、かなり偏執的で、この人がカルト的にとはいえ人気があるのは不思議なほどだが、しかし滅法面白い。
このストーリーはどこまでが妄想なのか、正解はないのだがいろいろ考えたくなる。序盤に夫は魚が赤ん坊に見えてしまう幻想を体験しているし、飼い猫は食事の前に手を洗う。隣家の娘は相手の妄想が具現化して見えるのが日常のようだ。また、ラストはその娘が泣きながら物語を読み上げるところで終っている。というところからすると、このストーリーはどこの世界で起こったものなのだろうか。
夕方になり、三軒茶屋へ。東京は日の暮れるのが早く、5時過ぎるともうとっぷりと暮れている。なので世田谷線の風景を楽しむことはできずに残念だ。
てくてくと歩いてCAPSULEへ。階段の手前に牧野さんの後姿があり、僕が気付くのは当然だが牧野さんもすぐに気付いてくれてうれしかった。ヨーロッパ遠征の話やColleenさんのことを聞かせてもらい、中にはすごく残念な話もあった。葉山さんもいらっしゃって、こうして立ち話できるというのはうれしいことだなと思う。
CAPSULEでこの3日牧野貴「SPACE NOISE」を展示上映した締めくくりに今日は「軌道を外れた宇宙の塵」というイベントで、目玉は新作「DEORBIT」の上映。運よく40名の枠に入れてよかった。
「SPACE NOISE」は今日はスモークや光線を排してオーソドックスに、といっても3Dだからやはり手触りのある映像。繰り返し見てもため息の出る映像表現は飽きることがなく、映画という括りを超えている。言葉で表現できないものを体験できるのは本当にうれしい。
上映を一旦終えて、イベント準備の間に山陽書店と古書いとうを訪れた。この二つは巡回ルートから外せないように思う。江口書店も見るからにわくわくする古本屋なのだが、今日は時間がなかった。
イベントは牧野さんの欧州ツアー報告から。25FPSの審査員を務めたことや、今回コラボレーションしたTelcosystemsのことなどを熱っぽく語る口調に引き込まれる。
そして最後は「垂直映画」という、縦長フォーマットで作られた「DEORBIT」の上映。なぜ縦長かといえば、教会という空間に合わせてのものだそうで、となるとそれを生かす場所なのかという問題はあるのだが、いざ見てみると普段横長で見ているものが縦長になるだけで感覚がかなり違ってくるのがわかる。これを教会のような天井の高い空間でやればなるほど面白いことになりそうだし、それはぜひ見てみたい。また今作はBalazs Pandiが叩いたドラムもかなり効果的で、ドラムがガツンと入るたびに映像がフラッシュしているような感覚がある。
その後は隣接のおしゃれカフェで食事。僕が得意とする鈍感力の限界が試される場だったが、まあなんとか乗り切った。いや、こんな感じとは思ってなかったんですよ。ジャケットくらい着るべきだったかも。
軽く食べて、まあ食い気より芸術だろ、という感じでCAPSULEに戻ると牧野さんがいろいろ語っており、得した気分で聞きいった。「DEORBIT」はその後3回見たのだけど、映像が回り始めるところや花火が散るように落ち着くところなど、何度見ても惹きつけられる。イベント後のほうが少数で落ち着いて見られることもあり、やはり食事よりこっちだなと。
最後にもう一度カフェに戻り、腹を満たして牧野さんにご挨拶して辞去。楽しいイベントだったし、おいしいものも食べられてよかった。
CAPSULEは駅から離れているので、余韻を楽しみながら歩くことができる。駅近の会場にはない楽しみ。
帰宅したら11時を回っていた。