怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

笹川治子→黒木渚

午前中航空券を取ろうとしたら無くなっており、妻がかなり不機嫌に。こういうこともあろうかとは思ったがめんどくさいので言わなかった僕も少し悪いが、八つ当たりされても。
お昼は機嫌直しも兼ねて、妻が何度か行ったというアヌサというインド料理屋へ。愛想のいいおばちゃんが出てきて席に座り、サービスでトマトスープが出てきた。妻はトマトが苦手なのだがいたく気に入っており、僕はもちろんおいしく頂いた。少しスパイシーで油の多いねっとりしたスープは何のダシなのか、旨みが濃縮されている。ラッキーだった。僕はダルカリー、妻はキーマを注文。どちらもまずまず。ナンがかなり大きいので満腹になった。カレーはインドというよりネパールなのかなという気がしたけど、なんにせよ安いし文句ない。お勘定を間違えそうになったのはあまりいい気分はしないけど、まあいいや。
午後から上野へ。上野の公園は色づいた木々が美しく、夕方の空気がしっくりと心地いい。こういう時間は大切だ。
東京都美術館で「The shiny future exhibition 2013 The HUMANISATION」展。「今日の世界はアートによって再現できるか」というテーマを掲げていて、出品作家に笹川治子さんの名前があるので行ってみた。
wah documentの「反対をする」は、反対することそのものが目的化していることを揶揄するような、無自覚的に賛成にまわっている大多数を揶揄するような、なかなか面白い作品。作品は多種多様で捉え方の難しいものが多く、かなり難解である。ひと癖ある作家がこれだけ集まると、取りとめのなさが大きな印象となってしまう面もあり、作家数を絞ってそれぞれの作品数を増やした方がわかりやすかったかもしれない。
さて笹川治子作品だが、「最後の晩餐」というのがあった。皿とフォークが置かれていて、「ご自由にお持ち帰りください」とある。そう言われても本当に持って帰るのは憚られるし、そもそもその意味は何だろうか。ちょうどスタッフの腕章をつけた女性がいたので、作品の意図について聞いて簡単に説明してもらったのだがわかるようなわからないような。笹川さんの作品は好きで何度か見ていると言うと喜んでくれてどこで見たんですかと聞かれ、なぜそんな突っ込んでくるのかと思いつつも答えているとどうも反応が強く、やっとこの人が笹川さん本人だとわかった。話してみてよかった。
そうなると無理してでもお皿を持って帰りたくなる。笹川さんも喜んでくれたし。手に捧げ持って、食を乞うような形で美術館を出て上野公園を歩いた。
やってみると、これはなかなか不思議な心地がする。空の皿を持つのはさほど珍しいことではない。料理をまっているだけだ。だがそれをパブリックな場所で行うと意味が完全に変質してしまうことが実感としてわかる。説明を聞いた段階ではわかりにくかったが、なるほどやってみるものだ。展示室を出て何分経っても、僕はまだ作品の中に居続けていると感じられる。アートの力を実感する、巧妙な作品だったと思うし、それを多分正しく感じることのできた自分はラッキーだった。あそこに笹川さんがいなくて、「ご自由にお持ち帰りください」だけだったらこうはならなかっただろう。
とはいうものの、これからライブなのが現実で、どうすりゃいいのというのもまた現実。レジ袋でも落ちてないかと思ったが、こんな時に限って何も見つからない。結局そのまま鶯谷に到着。
開場時間から15分も経っているというのに、東京キネマ倶楽部はまだまだ入場待ちの人が山ほどいる。これ近所迷惑じゃないのか。車も通りにくそうにしてるし。どうせ入れないので、公園に行ってみると幸いに大きな袋が捨てられていたので利用させてもらう。持ちやすかったし助かった。
僕は今日の黒木渚のチケットを取ったのは売り切れ直前だったので、入場もかなり最後。当日券は出ていたようなので、売り切れといっても少し余裕を持たせてたんだろうけど。
東京キネマ倶楽部は前から行ってみたかったところで、半円形の会場で収容人数の割に一体感もあってなかなかいい感じ。あとで使われたけど、脇のサブステージと階段も雰囲気を出しており、なるほどここでエゴラッピンは聞きたいよな、と感じた。
幕に映像を映してから開演。雰囲気はすっかりメジャーのアーティストで、これからどんどん大きくなってやるぞという意欲が感じられる。大きい会場、大きいステージ、演出、ライト、エトセトラ。その一方でバンドらしさは希薄で、バンドとしての一体感などはあまりない。ボーカル黒木渚のバックバンドのような雰囲気になっており(バンド名からしてもそうした部分はあるのだろうが)、そこが少し歯がゆいところ。またアレンジも無難できれいにまとまっており、それが逆にアレンジャーに作られた五線譜を弾いているように聞こえてしまう。これは音の核をボーカルとキーボードが握っているせいでもあるけれど。キーボードの聞かせどころが多いのにサポートメンバーというのもなんだかなあ。
ただ黒木渚のボーカル力はCDそのままで、動きを付けていることも考えると相当な実力。これは売れるわ。スレンダーな容姿とそれを生かしたチャイナドレス風の衣装もいいし、周囲も力の入れ甲斐があるのでは。600人の会場だけれども、すでに次回の2000人規模の会場でやるようなステージングを見せており、本当にやる気満々。武道館武道館と言っていたけど、本当に本気なんだろう。その準備を怠ってない感じ。
最後にサイン会があり、ミーハー気質の僕も参加したわけだけど、軽く100人を超える人らにそれぞれサインと握手する頑張りようには頭が下がるとともに、本当は音楽で頑張ってほしいという気持ちも。今日はワンマンだったけど、ワンマンを張るには基準点に達しない曲もまだあるとも感じたし。それにしても黒木さん、腕細くてびっくりした。あんな華奢だとは。
とことこと帰宅。本来は帰りにバーガーキングでバイキングの予定だったけど、カレーがまだ尾を引いていたのでオオゼキの半額弁当で済ませた。
妻に皿を見せたが一蹴された。残念だけどそりゃそうだ。皿は妻の知り合いが一人暮らしを始めるので、差し上げることにしよう。