怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

牧野貴 特別講義/上映会 2日目 映像/音楽@吉祥寺Art Center Ongoing

雨。休日の雨はよい。前の部屋のように、草に降る雨の音は聞こえないが、それでもよい。
お昼は残り物のトマトソースによるパスタ。十分。妻は甘くし過ぎるのが欠点だが、そこは言っても仕方ない。
食後に東京オペラシティアートギャラリーで「寺尾勝広・新木友行・湯元光男 ─ アトリエ インカーブ3人展」。みゅーぽんだと200円引きになるということは前の横浜と合わせて300円。170円で買っておけばよかったと今は思うが、先が読めない以上自分のポリシーでやるしかないわけで、結果をごちゃごちゃ言っても仕方ない。しかし500円が300円とは大きいな。
さて名前通りの展覧会、寺尾勝広は厚紙とアクリル画と大作の3つがあったが、良いのは間違いなくキャンバスにペンで描かれた大作。細かな模様がぎっしり書き込まれているのだが、その図柄を集積したことによるめらめらとした情熱がいい。本人としてはあくまでも細かな図柄を一枚にしているだけのようだが、意図していないからこその効果だろう。
新木友行は独自のデフォルメが面白い。色遣いは独特というよりむしろアール・ブリュットではありふれてると言ってもいいかもしれない。
湯元光男は構成と色遣いがいい。見ていて少し疲れる感じで、むしろ数点をじっくり見たい感じか。
展覧会を見ると、インカーブがどの作家のどんな作品を選んでくるのかで、その方向性やアトリエで作家と何を話しているのかが窺われる気がする。エイブル・アートとしての既成概念に大きく依拠しているような気がしてならない。どこか後追いの作品なのだ。アール・ブリュットとしての、言われてみればなるほどと思うような美しさを提示するのではなく、既成美術の美しさを彼らもやれるんですという視線を感じてならない。例えるならジミー大西の作品を前にして感じる居心地の悪さというか。
帰宅してややあってから早めの夕食としてグリーンカレー。美味。
食べてから吉祥寺へ。そろそろ雨も小止みである。駅からArt Center Ongoingまでの道のりにある古本屋とブックオフを覗いて会場へ。1階はちょっとしたカフェのようで、出てきたコーヒーもおいしい。京都のSocial Kitchenほど広くないがよく似た雰囲気がある。
コーヒーをこぼさないよう2階に上がると牧野さんがDJ中。1階でも飲めるのに上がって来たのは音を聞きたかったからだ。他の人もそう思ったのか、だんだん上がってきた。
少し遅れて始まった「牧野貴 特別講義/上映会 2日目 映像/音楽」。1日目は行けなくて残念だったけど、どちらかを選ぶなら2日目だったからよかった。牧野さんが話して上映、話して上映という流れ。2001年にブラザーズ・クエイに会いに行ったというところからスタート。ここがまずすごい。いきなりそこかと。そしていろいろ教えてもらい、帰国してからまたいろいろと。
牧野さんの作品は音楽の比重が高いので、音楽に関する話はコラボであっても相当濃密で、クラシックを聞かないなんて話にならないと言われたとか、TAMARUとのセッションでTAMARUが映像を見ずに演奏した「事件」のこととか。ジム・オルークとの出会いやコリーンとのやりとりとか。コリーンについてはCDを流していたけれども、僕も実はあれを試聴して一発でやられた一人なので共鳴するところが大きかった。2年ぶりに見た「while we are here」を感情移入しながら見ることもできた。牧野さんは「while we are here」を「感傷的な」と評した後に、「僕の作品は全部感傷的」と言い直していて、ああそうかとふと思った。そういう見方で見てはいなかったし、例えば光の絵巻を感傷的と見る人はあまりいないだろうけど、でも言われてみれば感傷的なのだなと。
牧野さんの話はローレンス・イングリッシュや石田尚志など僕が興味を持つ人たちがたくさん出てくるので、何から何まで興味深い。映画も初期作から近作までいろいろ見せてもらったけれど、一番よかったのは講義だったかと思う。このイベントと内容はかぶってもいいから、また別の形で企画してくれたらまたぜひ聞きたいなという気持ち。
終わって牧野さんに挨拶しようと思ったら女の子が名刺を出して話し始めたのであきらめたところ、牧野さんから挨拶してくれたのもうれしかったなあ。月並みなことしか言えなかったけど、ああいう瞬間はうれしい。
吉祥寺の濡れた道を少し浮かんでいるように駅へ。良い一日でした。