怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

光の当たらないところにも俊英はいる

忙しく京都へ、僕の失敗で。というのはジパング展を大阪で行くのを忘れてたから。実は行ける日があったけど芦屋に行ってしまい疲れて帰ってから気づいたのだが、その日会田さんのサイン会もあったんだよね。知ってればなあ。でもあの体調で行こうとは思えず、結局京都で行く羽目に。
11時過ぎに京都に着いて会場へ。デパートの展覧会って久しぶり。外ではイタリア博なんかやってるけど、20年前ならいざ知らず今どきイタリア博に需要あるのかと思うんだがそうでもないんだろうな。
あまり知らなかったけど、ジパング展は有名ギャラリーが所属作家の作品を一堂にというものらしい。つまりお金の臭いがぷんぷんするということだ。お金が絡んでいけないわけではない。作家には生活があるし夢も必要だ。ただその雰囲気が濃厚では美術を楽しむ気持ちが損なわれる。作品も一般受けというのか、人目をひくもの・派手なものが多く、落ち着きがない。上品なだけが美術ではないが、いかにも成金が好みそうな、若手の経済ヤクザが買いそうな作品があちこちに並んでるとそのノイズに疲れてしまう。上田順平とか山本太郎とか天明屋尚とかのことです。良かったのは池田学。緻密な書き込み自体はやれる人は何人もいるだろうが、題材や画風がよい。ちょっとアニメ的・ジブリ的ではあるが。ほかに藤田桃子、樫木知子。南条嘉毅の「宇津ノ谷峠」はマンガ的な省略の具合がすごくよかった。でも峠じゃないよね、あれ。有名どころではO JUN、会田誠など。近藤聡乃さんの作品は知久さんが音楽をつけていて映像もたま風味。物販もずいぶん充実していたが荷物になるので買わず。会田さんの作品集の実物を初めて見て、内容が良さそうなのでサイン会に行き逃したことを改めて後悔。いや、サインをそんなに欲しいわけじゃないんですが、どうせならと思ってしまう。
意外と時間がかかり、トラドラに行った後昼食。空腹もしんどいが食べ過ぎてもしんどく、結局体は回復しない。バスも来ないし。三条のブックオフふちがみとふなと「日曜日一人ででかけた」1250円。
ようやく来たバスで造型大へ。あのポチョムキン的階段を上ってギャルリ・オーブへ。騒がしいので何かと思ったらギャラリートークだとか。音声ガイドも嫌いな僕だから弱ったなと思ったが、時間的にがっちりかぶっているので仕方ない。人も多いし、環境的には最悪だった。東義孝「庭の見せ物小屋」展は短い生涯からの70点なので粒ぞろいとはいかないが、良い作品からは自分という存在への疑問と不安、苦しみとの格闘が見えてくる。独特の画風はものによっては思いつきのように見えるものもあるが、制作を重ねるごとに自信を深めていったように見える。絵が画家自身の内面を示すことは珍しいわけではないが、一貫してそのような思いを抱かせるところが特徴的だ。好きではないギャラリートークだが、断片を聞き及んだところでは厚い枠は特色を出して商品価値を高めるためとか、リーマンショック後注文が途絶えて落ち込んでいたといった内実の話が聞けたのがジパング展のあとだけに興味深かった。ほとんどの作品は締め切り直前まで手を加え続けて完成即梱包発送なので完成形を見るのが初めてだとか。異彩を放っていたのが死の直前描いていて未完成の作品2点で、これが今までの画風とは大きく異なりながらもやはり東氏の苦しみを如実に示す作品で印象的だった。
バスで元田中のLlamalabo Recordへ行ってみるが運悪く外出閉店中だった。次の機会は、ないだろうな。そこから北大路経由でSocial Kitchenへ。住宅街にあるお店で、思っていたより小さい。ホットチャイで心を落ち着ける。おいしかった。ソファで少しは疲れもとれた。
[+]上映会、今年は6作品。なかで一番良かったのが牧野貴氏のフィルムノイズと若干のぼやけた映像による「光の絵巻」。ノイズ系は最もセンスを問われるジャンルで、そこに挑戦しているのは自信の現れだろう。そしてそれ以上の作品だった。ノイズによる光と影のバランス、奥行き、変化、そして音楽、すべてが完璧。長い作品ではないがこうした作品を全編集中して見させるのは相当なものだ。これだけで来た価値がある。
実験映画といっても様々で、Ben Riversの「Slow Action」は映像詩で寺山修司に近い。Ben Russellの「TRYPPS #7」はトリップしてゆく女性を見せるのかと思っていたら途中から回転する鏡を使い観客をトリップさせにくる。ほかの3作品もそれなりに面白かったが、一日の疲れもあってか全力で楽しむ事ができなかったし、クオリティとしても少し下に感じた。明日のThe Best of 25FPSなども面白そうだし、今日の午後やっていたはずのフィルムライブもよさそうだったのだが、全部楽しめないのが残念。時間と体力のある若い人は全部見るべきだと思う。特に前衛音楽・即興音楽の好きな人や現代美術に興味のある人。高い金だしてベネッセに泊まるのもいいが、近くでこんないいものやってるんだから。前回も感じた事だが、これはやるべき事なのだという信念でやっているのが強く感じられる。そういう強さが僕みたいなふにゃふにゃ人間には眩しくもあり後ずさりしそうでもあり。僕は見る側なのでそこら辺の感覚がしかとは共有できないところだけど、やってる側からしたらこのむずがゆい状況に抱く当然の感覚だと思う。
終わって牧野氏からColleenさんの近況などを聞く。音楽を止めてしまうなんてもったいないというか暴挙だとさえ思う。牧野氏とのコラボで日本で上映+ライブツアーになれば面白いのだが。
帰りはバスも少なく、やむなく乗り換えで行ったのだが一日乗車券の効かない京都バスに乗ってしまい痛恨の出費。いや、3900円のDVD買った後で言う事じゃないけど、そういう出費を抑えて買ってるので。ツダチクの後がフレスコになったんだとか考えるからいけないんだな。
閉店間際のARTROCKNo.1でNo.9「Good morning」1200円。ほかにも欲しいのはあるんだが、財布の中が淋しすぎて。また今度。
遅い時間だが空腹具合もさほどなのでバーガーキングでマッシュルームチーズセット。まあまあ、というか意外によかったです。先斗町の喧噪を抜けて駅に向かい帰宅。午前様で妻も寝ていた。疲れたが実り多い一日だった。こうありたいね。
僕がもっとちゃんとしていたら、ジパング展は大阪で会田誠のサイン会の日に行って今日は朝から東義孝に行って、フィルムライブを見に行けただろうに。そこが後悔。かえすがえすも。