怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

美と羞恥

券を買ってしまったので朝から国立国際美術館へ行く。最終日近いと普通は混みあっていたりするものだが、そういうことはない。もともとそれほどエミリー・ウングワレー展に興味を持っていたわけではなく、常設展のおまけくらいの感覚でチケットを買ったので別にいいのだが、結論から言うとあまりよいとは思えなかった。中には100万ドルの値がついた作品もあったし、それはそれで決して悪くない。市場の評価は結構あたっているもので、その作品「大地の創造」は確かによいものだった。しかし、8年間で3000〜4000点、1日に1点の作品を作ったというエピソードでもわかるように、作品は基本的には子供の落書きに近い。適当にこしらえたものが素晴らしいもののように見えることはある。その確率が高ければ画家といってもいいだろう。しかし、それは芸術なのか。呻吟して産み出すものだけが芸術ではないとしても、そこに作家性はあるのか。大規模な回顧展に意味はあるのか。出来のよいものをそれなりに展示して、それで終わりではないのか。
一方で常設展は見ごたえあり。先の「30年分のコレクション」から引き続いて展示されているものもあれば初見のものも多数。マーク・トビー「夜」は何度見ても夜の雰囲気を見事に伝える傑作。バーネット・ニューマン「夜の女王」は今回初めて、ああこれは確かに夜の女王だと得心。細長く黒いカンバスにすうっと縦に伸びる白い線。やなぎみわ「White Casket」はもちろんよかった。横尾忠則「人生にはゴールが無い」は最近の作品で、正直衰えを感じてしまう。ただ、「二人のD」は狂人のような雰囲気に魅了される。それよりもマイク&ダグ・スターン「切り刻まれたモナ」のほうがよかったけれど。小沢剛「なすび画廊」は初見だけれど坪庭のような感性で非常にいい。ジャン=ピエール・レイノー「自刻像」アントン・ヘニング「無題(ピンナップ)」もよかった。それから杉本博司「聖ベネディクト教会」も惹きつけられる作品。もしかして杉本博司大好きなのではないだろうか。「レインボー北斎」の卑猥さもいい。ロレッタ・ラックス「ドロテア」、福岡道雄「何もすることがない」なども良かった。いくつかは何度見ても良さのわからないものもある。いつかわかるのだろうか?
見終わった後魚蔵で昼食と思ったら休みなので仕方なく龍馬へ。土曜はバイキング形式とのことで。会計のとき少し恥ずかしい思いをする。小銭入れに1000円札を入れておいてよかった。もう何度助けられたことか。
妻がぐったりして帰ってきたので夕食は外食となった。妻の希望を容れて粉もん屋。客が多い。こんなチェーン店よりも小さなお店に入りたいというのはもはや少数派なのか。勢いでビールを頼んでしまって後悔。風邪ひいてまんねん。