怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

美しい

なぜか6時前に目が覚める。おとといそういう話をしていたばかりで、これだ。ただ昨夜早めに就寝したこともあり眠気はそれほどない。どうせ早めに出かけることは決まっているのだし、寝坊するよりはいいだろう。
9時過ぎに出かける。まず国立国際美術館に向かう。開館したばかりだがそれでも数人客はいる。コレクション展なのでいくつかは見たことがあるものだが、ほとんどは未見。伊藤存「森」は刺繍による作品で、こういう表現もあったのかと新鮮な驚きを得た。糸のつながりのひとつひとつは木々を描いているようには思えないのに全体としてみると確かに森になっている。ただ、外でこの人の画集を見るとあまり良いものには思えなかった。実物を見ればまた違うのだろうか。それとも手法の面白さだけなのだろうか。横尾忠則「葬列2」はおそらくケネディ大統領暗殺を題材にしたものだが、透明なパネルを重ねる手法が奥行きと平板さとを同時に醸し出し、悲劇であるとともにショウでもある出来事を印象付けている。ほかに中西夏之「コンパクト・オブジェ」もまさにオブジェとして優れた作品。石内都「YOKOSUKA AGAIN」は私の廃墟趣味を刺激する。マット・マリカン「空港」は着想が面白い。空港を上空から描いているだけなのに、それがナスカの地上絵のような奇妙な模様となっている。トーマス・デマンド「木漏れ日」は日本的な感覚を外国の作家が見事に表現しているのが新鮮。それともこれは普遍的な感覚なのか。ヴォルフガング・ティルマンス「自由な泳ぎ手」はとにかく色と線が美しい。ダン・フレイヴィン「無題(親愛なるマーゴ)」は二色の蛍光灯管がこれほど人を引き寄せ落ち着かせてくれるのが不思議だ。
ショップでやなぎみわ「老少女奇譚」を発見。書店では見かけることがないので在庫を見つけたときに買っておこうかと思ったのだが、何分版型が小さいし内容もそれほど魅かれない。とりあえず留保とした。
空腹がつのってきたがこのあたりの店は日曜は休みが多い。仕方なく本町まで行き、徒歩で大阪市立近代美術館に行く途中思い立ってBELLONAに寄ってみると、なんと営業しているらしい。いったいほかに客がいるのだろうかと思ったが、寒々しい店内でひとり昼食というのも洒落ているだろう。9階まで上がってみた。
行ってみると一応客が1〜2組いる。皆女性で、おそらく買物客なのだろう。残念ながら当てが外れたが、それでも広い店内にぽつりと食事をするイメージは保たれている。チキンのトマトカレーソースを注文。予想したとおり、豚肉と比べ肉味が弱いのでどうしてもソースに肉が負けている。だがそれ以外は良好で、大皿に盛られたものをナイフとフォークで粛々と食べる感覚は今の気分にぴったりだ。食後のカプチーノもいつもどおり美味。目を閉じて先ほどの作品群を反芻しながら泡だったカプチーノを味わいながら飲んでいるこの時間は贅沢なものだ。
その後大阪市立近代美術館。こちらはあまりめぼしいものはない。面白いものも少しはあるのだが、ただ私の趣味とは重ならず、またそれが一部ならともかく主になっての展示では無理もない。人は多からず少なからず。これくらいなら気分よく見ることができる。
その後芸術気分に乗じて心斎橋のアセンスに行き、やなぎみわなどを探してみるがやはりここにもない。ここにきて新刊写真集や画集を見るとむらむらと欲望がたちのぼってくる。渋沢龍彦幻想美術館やデビット・リンチの画集など基本的に欲しいものリストにあがっているものより、そうした衝動を掻き立てるものを買うべきだろう。しかしなんとか衝動を押さえ込み店をあとにし、KINGKONGを2店のぞく。STONES店でto rococo rot「The Amateur View」1280円を見かける。少し高いが、どうしようか。sea & cake「one bedroom」1800円は高いように思う。epic45「May Your Heart Be The Map」1800円は確実に高い。結局何も買わずに店を出る。帰途梅田のタワーに寄るつもりだったが疲れたのでそのまま帰宅。