怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

宝石箱

以前から暖めていた、大山崎山荘美術館行きを決行。昨日のうちに阪急の割引切符(310円が230円に!)も購入して準備万端である。
大山崎に着いたのは午後1時。快晴で春うらら。美術館は天王山の中腹にあるようで結構な坂道を登ってゆく。レンガ造りの門というべきかトンネルというべきか、そんな入り口をくぐると右手は石垣、左手は切り立った土面である。鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」に原田芳雄扮する男の自宅に至る道がこんな感じだったような記憶がある。そこから更に坂道を登るといよいよ美術館である。
門を入ると大きな木、クスノキだろうか、があり車回しのように作られている。外観は旧松本家住宅を思わせ、なかなか立派なものである。
小さな玄関を入るとすぐに受付がある。どうも結構な来館者がいるようでざわざわとした空気の動きがある。
旧館は陶芸作品が中心で、河井𥶡次郎、濱田庄司、バーナード・リーチなどの作品が展示してある。大原美術館も陶芸は充実していた記憶があるが、あそこは所蔵品が充実しすぎていてかえって記憶に残りにくい。ここは少数精鋭、山荘を利用した小さな展示室ということもあってゆったりとした気分で眺めることができる。美しい蘭も並べられており、普通の無機質な美術館とはまるで違い、悪く言えば散漫なのだろうが、美術品という焦点を楽しむのではなく美術品を囲むもの全体を楽しむことが出来る。
新館は旧館からコンクリートの通路を辿って地下に造られている。北九州美術館の本館と別館をつなぐ通路も格別の趣があるが、この通路も気持ちを高揚させてくれる見事なものだ。ただし、使いやすさは全く考えられていないのがいかにも安藤忠雄の設計であるが。なにしろ展示室が円形でつまり絵画を壁にかけるのが大変なのである。ただ、見る側としては非常に良い建物に違いない。
こちらは絵画作品が中心である。モネの作品は正直趣味ではないし、そこにピカソやモディリアニが混ざると何がなにやら、まとまりのないことになってくるが、あまり文句を言ってもしかたない。ここは安藤忠雄で元が取れてると言うべきだろう。
美術館の外は庭園が広がり、隣の宝寺の三重塔や天王山を借景に、春の緑が美しい。ソメイヨシノも咲きはじめで、満開の桜もよいがこの時期の桜も可憐で悪くない。
美術館を後にし少し山に登ってみる。たいした山ではないと思ったが案外の急傾斜で随分疲れる。広場まで行ってしばらく景色を眺めてから引き返す。引き返す途中、道を間違えて竹林を横目に見る崖道に入り込んでしまう。これもまた、いやこちらのほうがツィゴイネルワイゼンだ。このときばかりは道を間違えた幸運を喜び、引き返す。
帰り道、古道具屋をのぞくとちょっと面白そうな品物が並んでいる。この店もなかなかいい。
また、季節を変えて来てみたいものだ。ただし、もう少し人が少ない時期に。