怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

特別な一日

一月一日は映画が千円の日である。千円の日は実は毎月あるのだが、正月に映画、というのはなかなか心躍るものがある。以前に「世界中がアイラブユー」を見た時はカレンダーをもらった。ある年は「海の上のピアニスト」を見て、すすり泣く他の客をいぶかしがりながら帰ってきた。今は亡き東映のガラガラの薄ら寒い客席から「CURE」を見て萩原聖人の演技力に感心しつつ心にうっすらと寒さを感じた。
で、今年はと言うと、無い。見事になにもない。辛うじて「ハウルの動く城」に食指が動いたので、仕方なくこれを見ようかと思ったのだが、駅まで来て定期券を忘れたことに気がついた。
こうなるともう行く気は完全に無くなった。散歩して帰る。
正月に映画を見に行くのがなぜ魅力的なのか。
おそらく、それは映画館への行程に惹かれているからだろう。いつもの喧噪と正反対の、ひっそりとした街。通る人はまばらでBGMは風の音だ。映画館を一歩出るとそこは夕暮れの無人都市だ。
先日読んだ川本三郎の「大正幻影」に、廃墟趣味について書かれたくだりがあった。元日の都心は廃墟という異界のとば口を思わせる。
しかし、元日営業の普及しつつある今、この廃墟趣味はそろそろ味わいがたくなってきたように思う。
人ごみにもまれての初詣が嫌いなのは、単に人ごみが嫌いなだけではなく、もっと魅力的なものが隣にあるからなのだ。