怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

香川へ

寒さに震えながら高松到着。あまり眠れなかったが予定より20分ほど早いのはありがたいが短時間のフェリーのくせにどうしてこうなるのかよくわからない。5時半に目をつけておいたさか枝でかけうどん小とイカ天。おいしい。朝からうどん、おいしいぞ。
ネットカフェへ向かう途中で香川県庁を見る。これか、丹下健三の傑作は。中には入れないし周囲も建物が建ち並んでいて鑑賞は不完全燃焼だがなかなかカッコいいじゃないか。
快活CLUBに到着、オープン席で3時間休む。椅子が全くリクライニングしないのは予想外だったが、眠いからなんとか。起きてコーヒーも飲めたし、問題ないか。
少し街歩きしながら高松市美術館へ。常設展しかやってないが、そういえば前回もそうだったっけ。現代美術のコレクションは、予算の制約からエディションものが多いのか、他所で見たことのあるものも散見されるが、質は高い。これはこれでいい。過去の図録を買い、丸亀の前売券もゲット。会期が始まっても前売券が買えるところは減ってきたが、こういうの助かる。
高松駅から丸亀へ。駅裏の寂れ具合を見ながら教えてもらった綿谷といううどん屋さんへ。Shangri-laくらいありそうな大バコで多数の従業員によりあっという間にうどんが出てくる。味気ないというより、うどん県というより、うどん王国の凄みを感じる。ここらで繁盛してるのはこの店くらいで、というか人の姿すらここ以外ではみかけないので一強にもほどがある。ちょっと興味のある焼肉屋なんかもあるんだけど、僕のスケジュールでは無理だし観光客はみんなそうなんだろう。
街歩きを過分に楽しむ。一寸島神社という神社などがある。弁財天の文字があるし厳島の文字もあるので水絡みは堅いところだろうしおそらく港関係なのだろう。その港が衰退著しいとあっては氏子もないに等しいのかもしれない。このあたり、朽ちかけを通り越してすでに朽ち果ててしまい、更地かたまに新築が建っていたりして来るのが遅すぎたかという印象。
そして丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ。志賀理江子「ブラインドデート」展。
最初にこの写真を撮るにあたってのエピソードのようなものを記したテキストがあり、かなり長いが全文を読む。幕をかき分けるとかなり暗い展示室にスライドが動く音が響き渡る。展示はほとんどが写真で、スライドは小さいものが多いしタイトルもその場には記されてない。プリントは局所的にスポットを当てられて端のほうはよく見えなかったりする。そうかと思えば壁に大々的に投影されるものはぼんやりしていて輪郭がはっきりしない。そんななかを動き回っていると、だんだんと頭が志賀理江子の世界に染まってゆく。前を向く男の横顔と遠くを見ているような女の眼。何を写したのかわからない風景。荒廃した室内。
ひととおり見て外に出ると再びテキストがある。死ぬことと生きること。それは今の私たちと区分された別の世界のことではない。地続きのように人は生まれ、地続きのように死ぬ。自分ももちろんそうだが、他者の死も生もやはり地続きにそこにある。そういうもの全てをひっくるめて志賀理江子は世界を捉え直す。志賀理江子にとっての写真はそういうものだと彼女は宣言する。それが展示室の中にある。また展示室に戻る。カシャ、カシャ、という強い音に包まれながら作品を身体に染み込ませる。こちらを見ているような、僕の身体の向こうにあるものを知っているような女の瞳。不安そうでいて怖じけない女の顔と、なにか定められたような男の顔。テキストの言葉が勝手に反芻される。国も事情も違うが、彼らだってそうなのだ。目を塞ぎ死へ走る二人の姿がフラッシュのように明滅する。単に見るというだけなら1時間でも余るくらいの展示室で2時間以上が過ぎていた。
写真集はサイン入りのものもあったのだが、どちらかといえばテキストやブラインドデート以外の作品も入った図録が欲しいところ。今回はパスにした。どうでもいいけど、理江子はRiekoではなくLiekoなんですね。ポスターだけ購入。
丸亀の今度は駅前を徘徊、こちらは寂れ具合がほどほどでまだ希望のある感じ。子供たちが遊んでいてほっとする。JRの時間を見ながら駅に戻りお土産に揚げぴっぴとおいりを購入。
高松駅に戻って片原町駅前から瓦町駅前あたりの繁華街を歩く。高松や丸亀に来るのは3度目、こうして街歩きできる機会は2度目のはずだけど、前回はそんな時間がまるでなかったが、やはりあてもなく勘を頼りに歩くのは楽しい。
マッシュルームレコードまで歩いたがアナログオンリーで持ち帰るのが大変だし疲れもあるからこれを掘るのは相当しんどい。引き返す。
半空という喫茶店で休憩、と思ったらむしろバーに近いお店。文学美術等に特化した興味深いお店だが、疲れを取るには向いてなかったかもしれない。
ルーツレコーズのほうは店が大きいし場所が繁華街のせいか商品の回転も良さそう。疲れも多少引いたので曽我部恵一「My Friend Keiichi」972円とハラフロムヘル「13歳」324円。なぜ高松にあるんだと思うような盤もいくつか見られるので、相当なマニアのお客さんが何人もついているんだろう。これは次回も必見かな。
物販めぐりの最後はYOMSという古本屋兼ZINEその他雑貨店。YY A GOGOという台湾シンガポールの昔の曲コンピカセットを500円で購入。あえて視聴はせず。きっと面白いはずだ。
そんなこんなで8時はとうにまわり、さすがに空腹にもなったのでこれも教えてもらった丸亀鳥という骨付鳥のお店へ。ほぼ満席という大繁盛で期待は高まり、そして実際美味しかった。一鶴という有名チェーン店で食べた時には塩辛さしか感じなかった骨付鳥だが、これは美味い。小さな店なのでこれ以上有名になると困りそうだけど。実は通りすがりに見かけた「しるの店 おふくろ」という定食屋っぽいお店にも心惹かれたけど、それはまた今度ということで。しるの店かあ。
丸亀鳥は小さな店なので持ち帰り用などは特にないので、一鶴に立ち寄ってお土産を仕入れる。なんか立派な店だなあ。
そして最後は待望のノイズ喫茶iL。喫茶という名前だが店内は真っ暗でまるで非合法ゲーム喫茶みたいだけど実際のところは至って健全。僕はといえば間違って入り込んだような場違い感だったけれども、しかしスピーカーからいい音を聞いているのは実にいい。のんびりさせてもらった。
少し早いが、これ以上することもないので送迎バスでジャンボフェリーへ。土曜の夜は閑散としていて早く行く必要は全くなかったし寒くもなく一瞬で爆睡。