怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

ソーコアのイベントが、結局ソールドアウトだったので途端に暇になる。

ほかにはなにも予定がないので、こういう時に行っておこうと昼から兵庫県立美術館へ。

Oh!マツリ☆ゴト 昭和・ 平成のヒーロー&ピーポー」というタイトルだけでもうパスする気満々だったのだが、よくよく見ればそれなりに期待できそうなものだったので足を運んだ。

その甲斐はあった。

兵庫県立美術館は、エントランスから階段を上がったところの展示がいつも印象的だし、ここの展示で期待感が変わる。「ヒーローの脱け殻」という、しりあがり寿の作品は、面白さとインパクトがあり、子供連れにもウケるだろうし、アートとしてはヒーローとピーポーの二重写しを意識させる。なかなか上手い。

展示室に入ってからも展示はすこぶる良い。作品のひとつひとつは地味である。名作傑作というものはほとんどない。しかし章立てに従って見てゆくごとに、それぞれが腑に落ちる。例えば最初の「集団行為 陶酔と閉塞」では、作品は昭和から平成にかけてさまざまな時代のものだが、それぞれの時代における、共通した空気というものをうまくすくい上げている。そしてこの展覧会の中心は「戦争 悲劇と寓話」にある。平凡なピーポーがヒーローにされてゆく時代の圧力を、芸術の力で語る。例えば、平凡でぐうたらなのらくろ二等兵がいつのまにか戦場で勇敢に戦い、そして平凡に帰還する様子は圧巻だし、主に杉本博司が収集している千人針や譽れの家の看板など、これでもかというほど学芸員の思いが伝わって来る。この展示を、あの間の抜けたタイトルで覆い隠すこともこの展示の一環なのかもしれない。

ちりばめられた現代作家の作品はどれも魅力的で、それは「過去の作品」ではなく、いま私たちが生きているこの時代の閉塞や悲劇や、あるいはピーポーやヒーローを描いているからだろう。そういう意味で、会田誠の「MONUMENT FOR NOTHING」よりは、石川竜一「MITSUGU」や柳瀬安里「線を引く」が印象に残る。前者は運命に生きただけの平凡な男が、自分自身と向き合う濃密な時間を圧倒的な緊張感で伝えている。後者は、集団やピーポーのなかに異人として自己を置くことで、その不思議さを引き出している。後者は名前に記憶のない作家なのだが、こうして展示されるだけのことはある。

そんなわけで3時間以上、閉館時刻までたっぷり鑑賞。満足。

帰途、野田の商店街を通り抜けて、前から気になってたビッグビーンズで値引きのおはぎを買った。