怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

紀伊半島の旅2日目

目覚ましでパチっと起床。コーヒー飲んだりして、やおら店を出る。2280円だった。
朝の寒い空気の中、駅の方へ歩く。通学の女子高生がまぶしい。
昨夜の徘徊を辿るようにあちこち歩く。明るいとまた感じが違う。松阪を歩き尽くす。
駅に着いたのはいいが、時間を勘違いしていて、次の電車まで1時間近くある。モーニングでも食べたいが開いてる店はないし、旧市街というのか、松阪城址方面を歩いてみる。こちらも雰囲気のよい街で、面白い建物などいろいろある。興趣は尽きない。
時間に合わせて駅に行き、紀勢本線で西というのか南というのか、尾鷲方面に向かう。
途中、線路の左手に手作りの城が見える。手作りといってもかなり大きな天守閣だ。土地のお大尽かと思うが、一度見てみたい。しかしこれが鉄路の限界、駅間のものまでは手が出ない。
尾鷲到着。駅前の店がやけに人だかりで、よほど安くてモノがいいのだろう。僕も気になったが、野菜や果物を買うわけにはいかない。見るだけにする。
ちょうどお昼なので、寿司でもと考えたが、近くの和幸寿司は中の様子も値段もわからないのでは入れない。別の店を探しているところ、尾鷲ボーリングセンターが見えた。とうにつぶれているようで、外壁も崩れかけている。もっと見ていたいが、まずは昼ごはん。鬼瓦という恐ろしげな名前の和食屋で刺身定食1000円を注文。まずまず美味しかった。煮魚も人気のようだ。たまたまだが、カウンター満席のため1人なのに座敷に上げてもらった。
改めてボーリング場を見に行く。こうした廃墟のなかでも、ボーリング場というのは造りの特殊さもあって、より情感が増す。田舎のせいか荒らされてもいないようだ。いつまでもこの姿を保ってほしい。
そうこうしてるうちに電車の時間が来た。街はもっと海のほうまで伸びているのだが、といってもう1本後にするのもなかなか厳しい。難しい選択だが、ここは中途半端で尾鷲を離れることにした。また来ることがあればボーリング場ともども見てまわろう。
次に熊野市で下車。若い駅員が珍しげに切符を見る。得意げな気分になる。
とりあえず、有名らしい花の窟神社へ行ってみる。途中、獅子岩というのを見かける。なるほど獅子だ。
花窟神社は、岩が御神体とのことで、なるほど大きな岩肌が見える。僕にはそれ以上に祭神の祀られかたが珍しかった。御神体を納めることがないからか、玉石の向こうに露天で標が飾られている。面白い。
あっという間に参拝してしまったので時間が余る。次の駅まで歩いていくつもりだったが、そっちは何もないだろう。熊野市駅なら、もう少し見るものがありそうだ。海沿いの道を引き返し、旧熊野街道を徘徊する。昔風の家々が見えるが、整っているので僕の好みではない。それでもやはり見て楽しい。ついでに鬼ケ城トンネルも見に行く。昔よくあった、最近はあまり見ない旧式のトンネルだ。今はこういうのも観光資源になるのだな。実際見にきた僕も満足している。帰りに熊野古道の入り口だけチラッと見る。旅人のために杖が数本置かれている。
下校時間らしく、中学生たちが楽しそうに通り過ぎてゆく。こういう場所での中学生生活はどうなのだろう。僕とはどこが違うのだろう。
駅に着く手前、さてと切符を探したが、無い。失くさないよう、入れるポケットは決めているのだが、無い。おかしいなとあちこち探りつつ、だんだん血の気が引いてくる。そういえば駅でパンフレットを見たからそこかもと足を向けたところで駅員から声がかかった。あの若い駅員さんだ。駅員さんも慌てており、言葉はごちゃごちゃだが、パンフレットのあたりに落ちているのを届けられたとのこと。僕がこの切符を出したのを覚えていてくれて声をかけてくれたのだ。渡すには規定の手続きがあるようで、書類を書いているともう発車時間間際になったので、駅員さんが気づいて声をかけてくれなかったら間に合わないところだった。また、予定通り次の駅まで歩いてたらそれも無理だった。ありがたい。本当にありがたい。いつも助けられてばかりだ。駅員さんに何度も礼を言った。
新宮に着いたのはもう夜。晩ご飯前にまず宿に荷物を置こうと、駅から少し離れたビジネスホテル紀州に行ってみたところ、今日は満室とのこと。問い合わせが多かったから、どこも満室ではないかと不吉なことを言う。なにかの工事で人足が集まっているのか。松阪の歓楽街が思い出される。気の毒そうにしてくれるが、それがまた不吉だ。
駅に戻るように次の旅館を訪ねたがここも満室。駅前の旅館も満室。だんだん冷や汗が出てくる。高いホテルしか空いてなければどうするのか。暖かい日だが野宿は想定外だ。久しぶりすぎる。よその街に行くか。どこなら空いてるんだ。
電話をかけるが2軒とも満室。絶望的な気分になる。3軒目でようやく「うちは満室だが系列の旅館は空いてる」と言われた。天の助けか。喜んで道順を聞き行ってみる。
たどり着いた長谷旅館は古い宿で、おばさんもしきりに申し訳なさそうにする。こちらとすれば、九死に一生なので古いだのはどうでもいい。それにこの程度の古旅館には慣れっこだ。風呂トイレ付きとはいえ4860円という値段はさすがに見合ってないが、だからこそ空いてるんだろう。しょうがない。電話では朝ごはんはどうするなどと聞かれたが着いてみると朝ごはんのことはまるで聞かれず、まあその方が気楽か。旅館の朝ごはんもたまには食べたかったが、明日の朝は早いから無理があるし。
部屋はまさに古い旅館で、タイル貼りの風呂やトイレは懐かしさすらある。ベッドも古いし臭いもある。まあでも文句はない。宿が取れない寸前だったんだから。それに浴衣の用意があるのもありがたい。カミソリがないのは困ったが、まあ伸ばしておくしかない。
とりあえず夕食に出かけるが、旅館に着いたとき別の客に「おすすめの店が定休日」と言ってたので期待ができない。パンフレットだけ渡されたが、これじゃ良し悪しはわからない。当たり外れは覚悟しつつ、とりあえず街に出る。松阪や尾鷲でももう少し賑わっているのではないかと思うような寂れかたで、人が全然いない。あの店もこの店も客がいない。スーパーもポツポツ客がいるだけで、いったいどうしたんだろ。新宮は僕の中ではわりと大きな街なんだが。駅前の道路も広場もやけに立派なんだが。
アーケードの商店街は道幅の広い立派なものだが、遅い時間とはいえほとんど閉まっている。大きな時計屋と楽器屋に煌々と電気がついているが、客がいないのでなおさら寂しい。
純喫茶バンビという可愛らしい看板が見えたので食事そっちのけで入ってみたかったが営業はしていなかった。残念。
めはり寿司の店まで行ってみたが、中が見えないしどうも足が進まない。入りたくなる店がないというか、入れそうな気がしない。うろうろするのは僕の好むところだが、食事する気分は出てこない。
一周したあげく、やけくそ半分で旅館のおばさんが口にしたお好み焼き屋五味に入った。結局僕以外の客は来なかったし、お好み焼きもどうということはなかったが、まあこれも旅の一つだから。1850円払って、あとは少し歩いて、明日朝用のサンドイッチをオークワで半額で買って、旅館に戻って風呂に入る。せっかくなので溜めてみたが温度調節がうまくいかない。昔の風呂はこんなもんだ。いろいろと懐かしく、これはこれで楽しい。
相変わらず充電ケーブルの調子が悪くイライラする。
就寝。