怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

三宮まで行こうかと考えたがそんなに用事もないので尼崎へ。駅が橋になってる武庫川駅で初めて降りて、街の草という古本屋へ。棚をつらつら見てゆくと、マンガなどはさほどなくて詩集の率が高い。ご主人が詩人なのだろうか。街の古本屋は時々文筆家が営んでいるものだ。記念がてら、思潮社から出ている吉岡実詩集を1200円で買った。以前、三宮の老舗古書店が閉店したとき、この本は割引でも手が出なかった記憶があるが、こういうのを見ると古本の相場はずいぶん下がったものらしい。
トコトコと出屋敷へ。以前何度も通った出屋敷だが、風景はだいぶ変わった気がする。昔たしかにあった古本屋はないし、あのマンションもない。すっかり変わってしまった。大学出の管理人はどこに行っただろうか。この街を舞台にした「赤目四十八瀧心中未遂」を思い出す。
そしてなかったはずの場所に古本屋があり、もしかしたら移転だろうか。ガレージのような小さな店だが、棚に矜持を感じるのは街の草同様。
あとはぶらぶら歩く。商店街は賑わっているが、少し目立たないアーケードはシャッター街になり、以前より少し寂れている。
歩き疲れて、 という喫茶店で休憩。
もう少し歩いて尼崎市文化センターへ。「白髪一雄 水滸伝 豪傑シリーズ」展。
白髪一雄の水滸伝シリーズを一挙に20点展示するという豪快な企画に、わざわざ尼崎まで足を運んだ次第。国立国際美術館が収蔵しているものなどは見たことがあるが、もちろんほとんどは初見になる。アクション・ペインティングという性質上、キャンバスの上で躍動した結果のうち、作家の基準を超えたものだけが作品として流通しているわけだが、こうしてみるとその中でも出来不出来はある。また、契約によりこのシリーズは海外での流通が主であったことから、ここに集まっているものは比較的評価の低いものが多いのだろう。それでも、ダイナミックな作品の連続は僕の心を刺激する。
尼崎市文化センターは言ってみればオフィスビルそのものの造作で、設営も照明も簡素でなんの工夫もない。これほどの作品群であるのに、展示環境としては劣悪だ。それでも、作品の力の大きさを感じることができた。願わくばもっと良い環境で、とは思うけど、ただ尼崎なんかでこういう企画をする難しさからして、関係者には感謝と拍手を贈りたい。
そして偶然ではあるが、鑑賞中に下のアルカイックホールからツァラトゥストラが聞こえてきたのはなかなかだった。
あと、展示資料の写真から、白髪氏がガッシリした偉丈夫とわかったのにはしっくりきた。
閉館間近につき展示室を出て、思い出のあるビルの前を通る。外壁の修繕中なのかな。取り壊すほど古くはないはずだけど。
せっかくなので尼崎でなにか食べて帰ろうとしたが、これといったものがなく、松乃家でチキンカツを食べ阪神で帰宅。