怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

珍しく仕事を休んで京都へ。特に病気さえしないなら、もっと休んでもよかったのだが、こればかりはなあ。
お昼に京都に着き、ピニョ食堂でコンビヂチゲ定食を食べる。店のお二人は夫婦だろうが、ケンカでもしたのか張りつめた雰囲気で、店に入った途端これでは一人目の客としてはうんざりする。夫のほうはそれでもまだ義務感が勝ってるが、それにしても客商売でこれですか。愛想とかを求めてるわけじゃないんだけどな。味は美味しかったが、正直うんざり。
まず京都国立近代美術館藤田嗣治展。さすがは藤田、平日だというのにまあまあ混雑している。今日はなんとか見れるレベルだが、土日はストレスばかりだろう。その藤田、もちろん客はパリ時代の作品がお目当てだろうし、関西ではあまり見る機会のなかった戦争画も注目だろう。そういった世評とは無関係に、フラットな気持ちで僕の好みで見ていくと、寄り添う二人の女性を描いた数枚の作品が気に入った。モディリアーニを連想させるような瓜実顔と無表情ながらどこか悲しげな眼、力の抜けた肢体から目が離せない。特に「花を持つ少女」は、この展覧会を見に来てよかったと心底思う。栃木県立美術館、やるなあ。
また、パリ初期に描いていた風景画も、不安と寂しさを湛えていて、素晴らしいものだと思う。ここも本展の白眉。
物販コーナーは充実しているが僕のお気に入りはせいぜいポストカードにしかならないというジンクスは今回も健在。お金が減らずに済むのでちょうどいい。
コレクション展は流し見。京都が東京国立近代美術館と違うのは、このコレクションの満足度かなあ。広さの制約や収集傾向の問題はあるにせよ、あまりにも物足りない。
ロマン商店へ。「le coeur qui jazz」800円、カルメン・マキ「閉ざされた街」400円、風「時は流れて…」300円。ここの価格設定はやはり少し安めかなと思う。
歩いてる途中職場より電話。無視するところだが留守電を聞くとそうもいかないので律儀に対応。さすが人格者だ。
ヨゾラ舎に立ち寄る。開店して間もないころ、ピカピカのお店に立ち寄った記憶があり、そのころは棚も埋まっていなかったはず。今は商品があふれて床を埋めている。よくある光景だ。100円箱からBLIND MAN’S SUN「BLIND MAN'S SUN」を抜き出して買ったのだが、ほかのお客さんとの話を聞くともうじき閉店するらしい。そうなのか。どうやらだいぶ厳しい状況だったらしく、あまり詳らかには書けないが、これはかける言葉が見つからない。憔悴した顔を見るのも辛い。閉店した古本屋についてはこれまでいくつもの記憶を抱えているが、ヨゾラ舎のご主人のことも忘れられそうにない。
続いてほんとレコードへ。 斉藤哲夫「バイバイグッドバイサラバイ」、荒井由美ユーミンブランド」、McCoy Tyner「Sahara」、YEHUDI MENUHIN RAVI SHANKAR JEAN PIERRE RAMPAL「IMPROVISATIONS」各500円。
最後に古本市へ。永井荷風「珊瑚集」などを100円で。
その近くで老夫婦が営むいづもやさんのコロッケとミンチカツを買って食べながら同志社寒梅館へ向かう。コロッケは揚げたてのおいしさ、ミンチカツは冷めて旨みが出てる。ミンチカツは肉の粒がゴロゴロしていて特に気に入った。
今出川に到着。ここでクレモナに立ち寄るつもりだったが疲れたので喫茶トリオで休憩。今出川に来ることはなかなかないんだけど、なにかあっても金がなくなるだけだし。
トリオというこの喫茶店、客はほとんど同志社大生のようだ。古めかしい店で椅子の座り心地はよくないが、こういう店はただ続いてくれたらそれでいい。そういえば天神にあったばんじろもこんな古ぼけた椅子で、でもあの穴蔵みたいな場所は落ち着いた。もうとっくに焼け落ちてしまったが。
そろそろ開場時間を過ぎたので寒梅館へ。牧野貴の作品上映で、今回は「AT THE HORIZON」「Space Noise 2」。どちらも西日本初上映とのこと。近年はシネヌーヴォでも上映の機会があったが、今年はここだけ。[+]からの流れで、外国の作家を紹介してもらうのも楽しみだったが、牧野さんの多忙さもあって難しいようだ。ただ、仕事を1日休めば寒梅館くらい来れるわけだし、そこはなんとでも。しかしこのクローバーホール、どこからどう行くのか二度目でも全然わからない。覚えてない僕も悪いがわかりにくすぎる。
なんとか入口にたどり着き、牧野さんの作品紹介を聞いてあとは見るのみ。マヌエル・クナップとの共作になる「ホライズン」は、クナップのデジタル表現が牧野さんのノイズとうまくハマっている。一本の線として地平線が現れ、そこから世世界が創造され、やがてまた線に収束してゆく物語はエキサイティング。こうした流れは牧野さんの作品の多くに通底しているが、それが違ったこに違った感覚が持ち込まれているのがいい。
最後に牧野さんに挨拶。毎日仕事に追われてる毎日僕にはと違い、世界で活躍する牧野さんだが、こうして言葉を交わせるのはがうれしい。もっともっともっと活躍して、くれることを願う。そうしたら上映の機会も増えるかもしれないし、一度しか見てない過去の作品も何度かまた見られるかもしれない。
8時ごろの終了なので駅までゆっくり歩いてゆっくり帰宅。少し休むだけでのんびりできるなあ。